作曲家の気持ちを、ほんのちょっとで良いからわかってほしい、と思って書きます。
以前、音楽ほど聞いている人の数とやっている人の数に差があるものもないだろう、ということを書いたことがあります。
芸術でもあり、エンターテイメントでもある。
自己満足に陥るとだめだし、かといって迎合主義になってもだめ。
難しいんですよ。
そんな中、私が普段の音楽の仕事で一番付き合いがあるのが、作曲家です。
作曲家というのは、表に出てこない人も多い。
バンドだと、メンバーの誰かが作ることが多いのですが、アイドルやLDHの曲なんかは、全国にいる作曲家が激戦を経て選ばれた曲です。
作曲家は、表に出ている人と同じくらいの知名度をほしい、という欲求があるわけではありません。そもそも、そういうタイプは専業作曲家ではなく、バンドや歌手を目指します。
専業作曲家を目指す人というのは、自分が作った曲が自分の身体の一部のようなもので、それが一人でも多くの人に聞かれることを至上の喜びと感じます。
でも、だからこそ作曲家の仕事というのは、どれだけ孤独で苦しいのか、というのを知らない人も多いのではないでしょうか。
エンターテイメントであるがゆえに、その苦労話をして大衆に理解してもらうのではなく、産み出したもの(曲)で納得させてみろ、という意見もありますが、その通りです。
しかし、信じられないくらいのストレスとエネルギーをかけて曲を作っていることだけは知っていてほしいと願います。
100%リスナーは、そんなことを気にせず、ただ音楽を聞いて楽しむのが一番です。
問題は、仕事を依頼してくる方たちです。
ここで念のために確認しますが、曲というのは厳密に言うと、メロディーとコードだけを指します。
本当はメロディーのみです。
曲の構成(Aメロ、サビなど)や楽器編成、KEYなんかは曲ではありません。
つまり、作曲家が身を削って創っているのは、メロディーなんです。
メロディーにこそ、作曲家の魂が宿っています。
依頼者からたまに「Bメロの部分のこのメロディー、ちょっと変えますね〜」なんて言われることがありますが、これは言語道断です。
そのメロディーを考えるのに、どれだけの時間と労力をかけたのかを知らないだけでなく、想像しようとすら思っていない人は、こういういことを平気で言います。
場合によっては、たった1音を3日悩んで選ぶこともあります。
そういうのって想像しにくいと思いますが、よくある実話です。
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私は自己責任型人間です。
世間における作曲家の評価を知っていて、あえてこの世界で勝負することに人生を捧げたのだったら、適当な扱いを受けても文句を言うな、という意見はその通りで、そんなことは作曲家自信も嫌というほど自覚しています。
ごく一部の有名作曲家以外は、経済的な成功を収めたところで、その知名度はさほどではありません。
その知名度に比例した、雑な扱いを受けることもしばしばです。
でも、作曲家ってそんな中で戦ってるんですよ。
腹が立つ事を言われても、ぐっとこらえて、黙々とDAWソフトに向かいます。
ただただ毎日、曲を独りで創り続けています。