今週のお題「バレンタインデー」
バレンタインデーに関しては、忘れられない小学生の頃の思い出がある。
自分の通っていた小学校は、とにかく男子と女子の距離が遠い。
こういった学校だったので、当然だがバレンタインデーがやってきても、特別なことは何一つなかった。
心のなかでは思うところがあったのかもしれない。
しかし、それを口にできるような空気ではなかった。
やはり空気の力はすごい。
20年以上前に起きたバレンタイン事件
事件が起きたのは、小学生最後の6年生の2月、つまりあと数ヶ月で卒業という時期にむかえたバレンタインデー。
その日も自分は普通に学校に行き、普段通りの時間をすごしたが、2時限目のあとの休み時間に、別のクラスの女の子に呼び出された。
「放課後にあなたに渡したいものがある、っていう人がいる」
バレンタインデーなんて気にしていない、というのが、自分の自分に対する嘘だとはっきり自覚した。
なぜなら、その言葉を聞いて、自分は体が固まりまくったからだ。
なんでもない日なら、そうはならない。
バレンタインデーだから、ということをアタマの片隅においているから、こんなにからだが硬直するのだ。
しかし、当時の自分は完全に空気の力に支配されていた。
どんな空気かというと、要するに女の子となんか話さないよ、という空気だ。
結果、その依頼を断ったのだ。
下校は、いつも同じ方向に住んでいる友達と一緒だった(もちろん男子)。
その日も、やはり普段と同じく下校していたら、なにやら後ろの方から追いかけてくる声が。
それは、昼間に自分に例のお願いをしてきた女の子を含む3人の女の子グループだった。
その中の1人の女の子の手には、あ・き・ら・か・にバレンタインのチョコレートがあった。
もしかして、自分が1人だったら素直にもらっていたかもしれない。
しかし、一緒に下校している友達のてまえ、そうもいかなかった。
その結果、どうしたか。
そう、逃げたのだ。
全速力で。
それから卒業までの間に、その女の子と会ったのかどうかすら覚えていない。
しかし、自分の中には恐ろしいくらいの罪悪感が居座り続けた。
それから約5年後
小学校を卒業し、中学校も卒業して高校生になった。
当時仲の良かった友だちに、一連の話をすると、
「それは、今からでも謝るべきだ」
という。
確かにそうだ。
小学校の卒業アルバムを引っ張りだし、電話番号を調べ、自宅に電話した(当たり前だが、当時携帯はない)。
緊張したが、昔ほど弱い心を持っているわけではない。
ちゃんと会う約束をし、数日後に、数年振りの再会を果たす。
そこで、当時のことを深く、深く謝った。
当時は、相当に傷ついたらしいが、今は気にしていないということだった。
ドラマではないので、別にその後付き合い始めた、なんてことはなく、その日以来今日まで彼女には会っていない。