音楽の世界にいる人間としては、ちょっと信じられないニュースだ。
いかにパクっているかは、色々なサイトで紹介してあるので、そちらを参照していただきたい。
さて、恐らくこういう問題は、結局真相は闇で終らせることが多いので、自分なりに真相の可能性を考えてみた。
また、責任の所在についても考えてみた。
可能性1 弟子の謀反
演歌の世界にはそんなに通じていないが、とにかく昔ながらの師弟関係が根強く残る世界ということは有名だ。
今回の作詞家にも弟子がいて、その弟子が書いた可能性が充分にある。
いわゆるゴーストライターというやつだ。
正直なところをいうと、ゴーストライターなんてゴロゴロいる。
有名な作詞家の知名度を利用したいため、新人自らゴーストライターを志望するといったことだって、少なくはない。
しかし、その場合は収入の分配方法などに気を使わないと、後にトラブルに発展することになる。
また、今回の事件が起こるきっかけとして、師匠のほうが教育の為に行っていることが、弟子にとっては冷遇でしかなかった、という価値観の相違が生み出したものだとすると、責任はどちらにもあるだろうか。
そんな人を弟子にとった師匠の方にも責任はあるし、嫌ならやめれば良かったのに弟子を続けた方にも責任はある、つまりどっちもどっちだ、と考える。
可能性2 仮歌詞のまま
楽曲がリリースされるまでには様々な工程があるが、そのうち「曲」と「歌詞」は当たり前だが最初の工程にあたる。
しかし、曲を作る時点で歌詞がないこともあるので、その場合は「仮歌詞」というものを用意する。
これは、その名の通り「仮」なので、既存の歌詞をそのまま持ってきても何の問題もない。
後に差し替えることが前提で使う、単なる素材だ。
それが、なんらかの手続きミスで、そのまま使われてしまった、ということもあり得る。
この場合の責任は、メーカー(レコード会社)にある。
メーカーは、当たり前だが、音楽業界で「プロ」として働いているひとの集まりだ。
この歌詞も、そのプロの耳を何人も通ってリリースされたはずだ。
その全員が気付かなかったとしたら、これはかなり恥ずかしい。
ミスチルという超有名バンドの、シングル曲を知らないとは、いくらジャンルが違ってもいいわけにしかならないだろう。
音楽の世界にある、著作権について少しだけ
音楽はカタチがない。
だからこそ、著作権を与えてない場合、それを別の誰かが複製してどれだけ収益を上げても、曲を作った人のもとにはお金は入らない、ということになってしまう。
そのためにJASRACに代表される著作権管理団体が著作権を管理し、権利を持っている人にお金が流れるようにしているのだ(そのシステムにはかなりの問題があるが)。
楽曲において
・コード(進行)
・構成(Aメロ、サビなど)
・アレンジ
に関しては、著作権が無い。
一番間違われやすいのはコード進行だが、これも既存の曲のコード進行をそのまま使っても、著作権侵害にはあたらない(倫理的な問題は個人の問題)。
コード進行に著作権を与えてしまうと、たとえば「ブルース」というジャンルの曲の殆どは著作権侵害になってしまう。
アレンジも著作権にはあたらない。
これを著作権侵害にしてしまうと、弾き語りは全滅だ。
では、著作権侵害になってしまうものは何かというと
・メロディー
・歌詞
の二つだ。
メロディーをパクってきて違うコード進行を付けても、著作権侵害になってしまうが、その逆は問題ないということになる。
しかし、メロディーも歌詞も、どこまで似せたら著作権侵害になるかは微妙なところも多い。
メロディーに関しては、歌ものであれば人の出せる声域は似たり寄ったりで、1オクターブに12個しか音がないので、一部分を切り取るとどうしても似ているものになってしまうし、歌詞だって、日本語を使う限り、似たものが出てきてもおかしくない。
同じことをうたっているラブソングなんて、いくらでもあるだろう。
そういった理由で、時々裁判沙汰にもなるのだ。
しかし、今回の歌詞は検討するまでもない。
経緯はどうあれ、絶対にパクリだ。