進む、進む、音楽業界のテクノロジー進化
現代風に縮めて言えば、コスパが高い、というやつだ。
楽器自体のコスパも昔に比べれば良くなった。
例えばアコースティックギターならば、昔は最低5万は出さないと、アコギの音がしない、と言われており、ギターを始める年齢層(高校生や大学生くらい)にとっては、悩みところのおおい金額だった。
今はどうかと言うと、経験者についてきてもらえば、物によっては2万前後でも充分というものもある。
もちろん、全てではないが。
しかし、楽器自体よりもコスパが飛躍的に向上したのが、制作現場での機材だ。
録音時にコンピュータと楽器をつなぐオーディオインターフェイスや、音作りに欠かせないモニタースピーカー、ボーカルを始めとした様々な楽器を録音するためのマイク、それらをつなぐケーブルやスタンド類など、がそれにあたるが、10年前と比べると、びっくりするくらい値段が落ち、質は上がった。
この辺の価格変動は、コンピュータの価格変動と似ている。
世の中が不況とはいえ、こと音楽制作に関して言えば、スタートしやすい時代といえる。
モニターヘッドホンとは
さて、そんな中で、昔から変わらず定番モデルの地位を守り続けている機材がある。
それが、モニターヘッドホンのSONY MDR-CD900STだ。
SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST
- 出版社/メーカー: ソニー(SONY)
- メディア: エレクトロニクス
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まず、モニターヘッドホンとは一体何なのか。
ヘッドホンという名前が付いているので、想像通りヘッドホンには違いないが、一般のヘッドホンとは、根本的に「目的」が違う。
一般のヘッドホンは、イヤホンも含め、「良い音」であればあるほど良い。
良い音は、人によって好みがあるので、自分の趣向にあった音質のヘッドホンを選ぶだろうし、メーカーはその需要に応えるために、様々な「良い音」のヘッドホンをバリエーション豊かに販売している。
重低音が強調されていたり、ボーカルがくっきり聞こえたり、といった具合だ。
ではモニターヘッドホンはどうかというと、「良い音」のヘッドホンではない。
そうではなく、「忠実な音」のヘッドホンだ。
例えばボーカルを録音し、それをヘッドホンで聞く際、そこに求められるのは「良い音」ではなく「忠実な音」だ。
簡単に言えば、悪い録音は悪い音として聞こえてもらわないと、制作現場では困る。
鑑賞用ではないから、当然だ。
そのモニターヘッドホンの世界標準が、日本のSONYが作ったこのヘッドホンだ。
通称「900」という。
少なくとも、自分が音楽の世界に入ったときには既に業界標準だった。
今は対抗馬も数多くあるが、それでも900の地位は揺らいでいない。
出来た時から完成されていた、と言ってよいだろう。
楽器屋に行ったら、おそらくこのヘッドホンは置いてあるし、試聴もできるはずだ。ぜひ聞いてもらいたい。
決して良い音とは言えないが、その音が世界中のエンジニアに愛され続けていると思うと、日本人としては感慨深いものがある。
また、テレビなどでたまにうつる録音現場でミュージシャンやエンジニアがあたまにしているヘッドホンを見てほしい。
900お馴染みの、赤いラインが入ったヘッドホンをつけていることが多いはずだ。
これから音楽の世界に行こうと思っている人は、少なくともこのヘッドホンだけは持っておくべきだ。
好き嫌いに関係なく。
※ちなみに、昔900は完全業務用で、普通の楽器屋では販売されていなかったから、試聴も出来なかった。