DTMというワードが今ほど認知されていない時代。 そしてネットもないので知識を得るのが今よりも断然難しかった時代。 そんな時代にSC88という機材を手に入れました。 正確に言えば、SC88proですね。
当時、なぜこれを買ったのか。 これで楽曲制作ができる、という宣伝文句だったからです。 それは確かに正しいのですが、「どうやって」の部分が私には抜けていました。
慢心もあったでしょう。 ピアノを習っていたので、基礎的な音楽の素養はあったし、機械やパソコンにも人並みよりは強い、と思っていました。
手に入れて愕然とします。 使い方がぜんぜんわかりません。
音楽機材なので、家電量販店に行っても使い方が分かる人はいません。 ならばと楽器屋ですが、こういう機材はつかう環境(持っている他の機材など)で使い方が変わり、結局解決しません。 大枠さえ理解していればわかるのでしょうが、当時は何が大枠なのかもわかりません。
結局断念して押入れの奥に眠っていました。
時は経ち、今は音楽分野で働き、ネットで検索もできます。 そして、使い方も説明書なんかまったく見ずともわかります。
しかし、今考えてみても、あの当時これを使いこなそうというのは無謀だったな、と思います。 そのくらい全体が見えていませんでした。 MIDIという概念がわかっていなかったら、そりゃわかるわけないですね。
SC88はMIDI音源です。 ↓ MIDI信号(MIDIキードードやDAWのMIDIトラック) ↓ MIDI音源(SC88) ↓ オーディオインターフェイスのINPUT(ステレオ) ↓ DAW上のステレオオーディオトラック(インターフェイスのINPUTチャンネルをアサイン)
これで音が出るし録音もできます。
現代ではMIDI音源はソフト化しているので、
MIDI信号 ↓ ソフト音源 ↓ インストトラック→マスター
という流れで音が出ます。 最近のDAWソフトではソフト音源のトラックとインストトラックがまとめられ、まるでオーディオトラックを扱うように処理できます。
時代は進んだものです。 逆に、当時このシステムを考えた人の発想力ってすごいですよね。 技術者以外に、何人が理解して使っていたのでしょうか・・・
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今はソフト音源で手軽に良い音が出るようになりましたが、音楽って不思議なもので、リアル過ぎない音素材がしっくりくることだってあります。 いわゆるデジタル臭い、本物からは程遠いピアノの音なんか、結構使います。 そういうとき、あえてこの音源を引っ張り出して来て使うと、男心(と言ったら現代では批判されるのかも・・・)をくすぐります。
いやはや、名器ですね。