人や職業にもよるが、人前に立って何かをすることは、たまにあるだろう。
その時に殆どの人が感じるのが緊張。
変な汗が出て、心拍数は上がり、手が震えて、結果普段できることもできなくなる。
こういった経験は、決して良い経験とは呼べないかもしれない。
それが、本当にたまにしかないことならば良い。
例えば結婚式のスピーチや余興などは、年に1,2回程度だろう。
しかし、定期的にそういったことをしなくてはいけない状況の人もいる。
あがり症だがミュージシャンになりたいという人だってもちろんいる。
これは、頻繁どころの話ではなくなる。
緊張はもちろんしたくないので、人は緊張しないような方法を考える。
手のひらに「人」という字を書いて飲み込む、オーディエンスを茄子と思う、といった方法はよく聞くが、それが功を奏したという話は聞いたことがない。
ではどうすれば良いのだろうか。
答えは、緊張しないようにすることを諦める、だ。
何の解決にもなってないと思うかもしれない。
しかし、実際に諦めるしかない。
緊張しなくなるなんてことは、ほぼ無いと言って良いだろう。
この記事のタイトルは、「緊張しなくなる為の方法」ではなく「緊張することに対する対策」だ。
つまり、緊張することを受け入れた状態での対策を考えるべき、ということだ。
昨年、31年半の放送に膜を下ろしたお昼の代表的な番組、笑っていいともの司会は、始まった当初からタモリだ。
あれだけ毎日TVに出て場数を踏んでいたら、もう緊張なんてしない、と思うかもしれないが、実は緊張している。
あるNHKの番組で、本番中のタモリの心拍数をリアルタイムで監視するという企画があったが、本盤が始まったら、間違いなく心拍数が上がった。平均して20以上は上昇していた。
しかし、視聴者はそんなことは微塵も感じないのではいのだろうか。
ここが一番重要だ。
緊張しないようにするのではなく、緊張しても良い結果が出るように(もしくは悪い結果が出ないように)することの方が大切だ。
それができているから、タモリは素晴らしい。
では、その対策は、といえば、自分の見てきた経験(一応音楽関係なので、一般の人よりも、緊張を強いられる人を身近で見てきた、と自負している)からすると、正直「場数」しかない。
変な汗が出ても、心拍数が上がっても、手が震えても、それを乗り越えて良い結果を出すためには、考えずとも身体に染み込んでいる、というレベルまで繰り返し練習し、本番のような場所を何度も経験することしかないだろう。
例えば、結婚式のスピーチ。
練習は1人でするよりも、誰かに見てもらった方が、確実に緊張する。
その相手がたとえ恋人でも、家族でも、やってみたらわかると思うが、1人でするときに比べると遥かに緊張する。
練習段階で緊張する、というのは非常に有効だ。
本番では、どうせ緊張するのだから、練習でも緊張していたほうが、より本番に近いリハーサルができる。
実は、音楽の世界において、緊張しない人間は成功しにくい、という定説がある。
逆に言えば、成功の為には緊張は必要だ、ということだ。
緊張する状況に、そんなにたくさん身をおくわけではない人にとっては、緊張することによって結果が悪くなることはあっても、良くなることはない、と思っているかもしれない。
しかし、一流のアーティストだって勿論緊張している。その緊張を逆に利用して、とんでもないパフォーマンスを見せるのが、一流と呼ばれる要素の一つにもなっている。
また、緊張に似た言葉で「緊張感」ということばがあるが、この言葉から受ける印象はどうだろうか。
引き締まった、良い印象を受ける人も多いはずだ。
緊張しない人には、緊張感が出しにくい。
こういったことをふまえて、先に書いた定説があるのだろう。
生まれつき緊張しない人もいる中で、緊張すること、あがり症だということは、短所だとみなしているかもしれないが、決してそうではない。
実は人前でパフォーマンスをする一つの、必要不可欠な才能を持っている、とも言えるのだ。