健康という言葉の意味を国語辞典で調べると、以下のように書いてある。
異状があるかないかという面からみた、からだの状態
異状があるかどうか、というのを自分で判断できれば、自分の体が健康なのかそうでないのかを判断できる、ということになる。
さて、そんなこと素人にできるのだろうか。
できるはずがない。
それはプロの医師にしかできない。
プロの医師ですらできないこともある。
素人 vs 医師
医療国家試験は、日本で行われている試験で最も難易度が高い試験だ。
東京大学に入学するよりも難しい。
さらに、試験に合格した後も、ありとあらゆる現場経験を積まないと、正しい診療、判断は難しい。
ヒトの体は、とにかく複雑で、かつ個体差もある。
マニュアル通りの診療、判断は完璧にでき、その上、経験からくる勘も必要だ。
日本の医療、医師が完璧と言っている訳ではない。
だから複数の医師に意見を求めるセカンドオピニオン、サードオピニオンも社会的に認められつつある。
医師の診断ミスや、ずさんな管理などが原因の重大な医療事故もある。
しかし、これは医療の世界だけではない。
判断ミスが一度たりとも起こらない、しかも聖人君主のような人ばかりの業界なんて存在しない。
いくら求められるものが大きく、その分責任が重かろうが、やはり同じ人間が携わっていることには違いがないのだ。
かと言って、自分の体は自分がいちばん良く知っている、というのは、あまりにも軽すぎる主張だ。
ほとんどの場合、素人の自己判断と医師の判断は、医師の判断の方が正しい。
たった一つの医療ミスで、医療全体や医師全体を判断するのは馬鹿げている。
子供にも自己責任は適用されるのか
これと似た事がある。
健康分野のことを素人なりにかじった程度の人の主張だ。
ある知り合いに、幼児には一切薬を与えない、という母親がいる。
自身も、いわゆる健康マニアで、ベジタリアンだし、運動も心がけているらしい。
その結果、薬はヒトには不要、という考えに至ったそうだ。
上述したように、自分の体は、自分ですらわからないものだが、責任は自分にあることを前提とすれば、自分の体を使ってどんな実験をするのも自由だ。
薬を使わない。
肉を食べない。
炭水化物をとらない。
いろんなことを合法の範囲で試せば良い。
実際に自分も炭水化物は抜いている。
しかし、それはあくまで自分の場合に限る。
人に薦めたりすると、多少なりとも責任が発生するが、その責任が取れるほどの確固たる知識、経験を持つことはほぼ不可能だ。
ここで、自分の子供、しかも幼児に対しての行動は、親の自己責任の元で、と言い切ってしまえるのか、ということだ。
幼児は判断能力がほぼゼロだ。
食べさせるものも、すべて親が決める。
しかし、それでも子供は自分ではない、一個人だ。
無責任な実験を子供に対して施すことは許されない。
自分の得た知識を盲信しすぎると、ある場合には不幸が生まれるかもしれない。