日々じゃーなる

日々の生活でおもったことをなんとなく、でも結構まじめに綴るブログです。 趣味は読書とビリヤード。仕事は音楽関係。

出版業界が変わるか、いや変われるか

 
ついに日本での読み放題サービスがスタートした。
 
読み放題サービスはこれまでもYahooやシーモアがおこなっていたが、本命のアマゾンということもあって、今回は大きな話題となっている。
 
30日の無料体験が用意されているので、早速自分も登録した。
ラインナップに関しては様々なサイトで、そのジャンルや豊富さが検証されているのでここでは省くが、自分にとっては満足度70%といったところだろうか。
 

「あの」業界に流れが似ている

 
電子書籍読み放題の話が出た時に、こんなところまで「あの」業界に似ていると感じた。
 
そう、音楽業界だ。
自分は音楽業界の人間なので、そちらの方が詳しい。
 
近年の音楽業界の変遷を無理やりコンパクトにして説明してみよう。
 

音楽業界の変遷

 
ことの始まりはiTunes
これによって、音楽の買い方、聞き方が変わった。
 
物理メディアであるCD販売のほうが、CDプレス、運送、ジャケット印刷、小売店などが関わる分、お金が多方面に分配される。
 
従って、データ販売開始後も業界としてはCDを販売する方に力を入れた。
オフィシャルサイト上で、CD販売サイトへのリンクは貼っているのに、データ販売のリンクは貼っていない、ということも多々あった。
 
データで売っているにも関わらず、CD販売の方にユーザーを促すというのが見え見えだった。
 
物理的所有欲を喚起するような論調も多く、その一部には業界からの圧力があった。
 
しかし、iPod、その他携帯音楽プレーヤーの普及とともに、データ販売が伸び、CDの売上は下がる、という現象はしばらく続く。

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音楽のフリー化が進み、CDの売れ行きが減り続けるだけでなくデータ販売も減り始める。
 
そこで出てきたのがストリーミングサービス。
つまり聴き放題サービスだ。
現在ではApple Music、AWA、LINE MUSIC、その他が競い合っている。
 

出版業界の変遷

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書籍全体の市場規模は1996年をピークに下がる一方だ。
ここで書籍販売が減り始めた理由も多方面で分析されているが、その要素としてインターネット(特にブロードバンド)の普及は外せないだろう。
 
2000年を超えたあたりから電子書籍サービスが始まる。
音楽業界と違うのは、電子書籍販売は緩やかながら伸び続けていることだ。
しかし、伸びなやみの一面も否定出来ない。
 
そこで今回始まったKindle Unlimitedだ。
 

業界構造のパラダイム・シフト

 
音楽業界の方が先行して変化が起こった。
 
1999年に発売された宇多田ヒカルのアルバム「First Love」の売上枚数は765万枚
日本人が1億2000万人しかいないことを考えると、この売上枚数がいかに異常なのかがわかる。
 
その頃の売上をベースにビジネスモデルを構築すると、当たり前だが今後は完全に失敗する。
 
音楽業界の人間は、変わらざるを得ない崖っぷちに立たされていると言っても良い。
 
自分としては、それは良いことだと思うし、必要なことだと思う。
流れない水は腐る。
 
今回始まったKindle Unlimitedは、同じく出版業界をある意味崩壊させるかもしれない。
 
今回のラインナップに全く入っていない出版社は、その変化についていく体力がないのかもしれない。
 
しかし、何人か前の首相ではないが、変わるときには多方面に痛みが伴う。
出版社だけでなく、著者本人の印税収入にも大きな影響が出るだろう。
ここも音楽業界とミュージシャンに似ている。
 
変わることによって便利になるのならば、その変化は起こるべきだ。
 
 
いまから数年後の出版業界が楽しみだ。