職業柄、音楽学校関係者の知り合いも多いし、実際にそこで長く働いたこともある。
音楽学校と言っても、クラシック系の所謂「音大」ではなく、ポピュラーミュージック寄りの学校だ。
音楽学校を含めた、クリエイティブ系の学校が全部ダメだとは言わないが、かなり注意しないと、空気の力で意図せぬ方向に流されてしまい、高額な学費が水の泡となってしまうおそれがある。
クリエイティブ系の学校の成り立ち方
クリエイティブ系の学校というのは、義務ではなない。
有名なミュージシャンの中で、音楽学校に通ったことのない人は大勢いる。
また、学校の中には学校法人ではない学校も多く含まれ、そういった学校は極端な話、入学して1日しか通学しなくても、在籍したことになるし、卒業したことにも出来る。
つまり、実質的にはほとんど通っていない学校でも、その学校の卒業生とプロフィールに書いてある場合も多々ある。
これまで含めると、音楽学校に実際に通ってミュージシャンになった人のほうが少ないのかもしれない。
私立の学校というのは民間企業なので、当然ながら利潤を追求する。
学校というのは、収入のほとんどが入学金と学費なので、それはまちがいなく在籍者数に比例する。
つまり、入学者数をあげるための努力を日々積み重ねて利潤を追求しているのだ。
有名なミュージシャンを輩出した、という事実は広告として絶大なる効果を発揮するので、たとえそのミュージシャンが卒業までに1日しか通学してなくても、学校側としてはその学校の卒業生と謳いたい訳だ。
実際に
「俺はこの学校から学んだことなんてない」
といって裁判沙汰になった例もある。
話が若干それたが、クリエイティブ系の学校に行くことが全て無駄になるわけではない。
やはりそこには、その分野の熟練者が講師として存在し、そのスキルを目の前で見ることができ、わからないところをピンポイントで質問することもできる。
しかし、なんといってもこういった学校は学費が高額だ。
1年で100万円以上は当たり前の世界。
つまり、効果的に利用しないと、金銭的にも、そしてもちろん時間的にも痛い目を見る。
学校との付き合いかた、講師の質
まず、学校に行ったら上達して、その結果その分野で生計を立てていける、という幻想を捨てること。
音楽の場合、例えば全国に名を轟かす有名ミュージシャンに、その学校に入ったらなれる、というのならば、どれだけ高額な学費を払ってでも行くに値するかもしれないが、実際にはそうはいかない。
理由は2つ。
一つは、上達の仕方には個人差がかなりあり、一般論は求められないから。
(つまりマンツーマンがベターだが、カリキュラムありきなら結局同じ)
もう一つは、上達することと生計を立てていけることは、基本的には関係がないから。
クリエイティブ系の学校は、通うところではなく、利用するところだ。
実際に、こういった学校で無遅刻無欠席、成績も上々という生徒よりも、ちっとも学校にこなくて、テストも受けないような生徒の方が有名になることも多々ある。
自身の活動のごくごく一部に通学があるから、学校の優先度が下がってしまい、どうしても優等生にはなれないのだ。
音楽学校の成績なんて、学校を出た後、いや出る前からなんの役にも立たない。
それから、講師の質。
講師のプロフィールに、「幅広く活躍中」といった漠然とした活動内容しか書いていなかったら、残念ながらその人は幅広くも、活躍もしていない。
本当に幅広く活躍していたら、調べる間もなく知られているはずだ。
では、肩書がなにもない人がダメな講師ばかりか、といえばそうではない。
講師に求められるのは誠実さ。
胡散臭い言葉だが、他の言葉が見当たらない。
例えば音楽の場合、メジャーという世界がある。
メジャーの世界にいったことがない、またはほんの少ししかいたことがない講師が、メジャーに行きたいという生徒に
「メジャーに行くためにはどうすれば良いですか」
と質問されて
「わからない」
と答えることができる講師は、誠実だ。
逆に、一般に売ってある書籍や雑誌で得た知識を総動員して
「メジャーに行くには・・・」
みたいなことを語る人は、怪しい。
一般に売ってある書籍や雑誌で得た知識を生徒に伝えて、安くない給料をもらう講師が誠実とは言えない。
上述したように、スキルが高いことと、それで生計を立てていけるのは、関係がありそうで実はあまりない。
一方、スキルが高くなりたい、という純粋な気持ちを持っている人が多いのも事実だし、別に悪いことではない。
講師の方も、クリエイティブなことで生計を立てていくには、みたいなことを一切話さず、ただひたすらスキルだけを教える、と割り切れれば良いのだが、講師という立場は、なかなか「わからない」とは言えないもので、これが言えるかどうかが講師を、引いては学校を見極めるポイントだろう。
クリエイティブ系の学校は、学校で学んだことで自身を高めていくのではなく、自分自身を高めていく過程に学校「も」ある、ということをしっかりと意識すれば、年間100万円以上の学費も払う価値がある、、、かもしれない。