佐々木俊尚さんのファンですが、新書に関しては新しければ新しいほどよい、逆に言えば古いと優先度を下げがちになるので、2008年に出版されたこの本もこれまで読んでいませんでした。
ちょうど家に読む本が無くなったので、買ってきて読み始め、現在半分くらいですが、これがまた滅法面白い。
というより、10年前に書かれた事なのに(?)今読んでも現代の事を書いてあるように思えるのは、多分私の時代把握が著しく遅れているのと、筆者の取材力、筆力の高さ故だと思います。
(社会は激変してますが、論壇はさほど変わっていない、ということもあるかもしれませんね)
タイトルに「ブログ」とあるので、ブログのことをいろいろ書いてある本なのかなと思っていましたが、もっと大きな話です。
インターネット、web2.0を背景にメディアや社会情勢、特に働き方や考え方がどう変わっているのか、変わっていくのかが書いてあります。
ここに度々出てくる「ロストジェネレーション」という世代は、別名「団塊ジュニア」とも呼ばれ、1970~84年生まれの世代を指しますが、そこに私も含まれます。
「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」… サラリーマン世代論 :日本経済新聞
だからこそ、世代間の特徴を冷静に、見事に分析している本書は、「その通りだ!」と思わず言いたくなる箇所がたくさんあります。
例えば、第8章の「辛抱を説く団塊への猛反発」の中で、今時の若者論(我慢ができない云々)に対する反論(要約しています)。
・我慢しないのは、しても報われないから。
・そもそも、非正規雇用や過労死を見る限り、我慢しているじゃないか
・非正規雇用を増やした結果技術伝承がうまくいかなくなったのは明らかで、これは若者のせいではない。
これらは、今もはびこる「今時の若者論」に対する有効な反論です。
というより、10年以上前にこういった反論がすでにされているにも関わらず、いまだに「今時の若者論」をいう人は、ちょっと勉強不足がすぎるのではないのでしょうか。
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転勤を会社から命じられたとき、家族がある人ならば必ず、独り身の人でも普通は悩みます。
住んでいる土地に対する愛着もあるし、生活も大きく変わらざるを得ません。
子供にとっての友達や学校、親にとっての人間関係も、いくらネットが普及してコミュニケーションが距離を縮めたとはいえ、築き直しになります。
新しい人と出会えて最高、なんて牧歌的、楽観的なことを言える人も中にはいるのかもしれませんが、そうでない人も多い。
しかし、転勤「依頼」ではなく「命令」の場合は、人のタイプなんて無視です。みんなもやっているから、君も従いなさい、です。
普段は個性とかアイデンティティーとかいう割に、都合の良い時だけ「みんなもやっている」です。
私たちロストジェネレーションが、社会を動かす中心の世代に段々なりつつあります。
法律や予算を決める政治家も、会社の大きな権限を持っている役職の人も、私たち世代が占める割合が明らかに増していると感じます。
そうならば、時代は必ずよくなる、と思いたいですね。
そして、そんな私たちが数十年後に、たとえ時代をよくしていた要因になっていたとしても、「今時の若者論」だけは口にしないようにしたい。
経験を伝え、あとはその世代に任せる、そのスタンスを崩さないことがなによりも重要だと思います。