音楽の無料化がすすんでいます。
最初にそれを感じたのはYouTubeでした。
動画付きで音楽を無料で聞けるのには驚きました。YouTubeのサービスが始まった当初は、まだ音楽の世界に足を突っ込み始めた程度だったので、そのサービスが音楽ビジネスを大きく変えていくとは思いませんでした。
テクノロジーの進化はとにかく早い。あっという間にCDの売れ行きは落ちます。
日本はいまだCDが売れますが、正直この現象は日本だけで、日本を超える音楽先進国であるアメリカでは以前から、CDの売り上げをデータ配信が抜き去っています。
CDが良い、悪い、の問題ではなく、そういう現象が起こっている、ということです。
そして多分、この流れは変わることはあっても戻ることはありません。
音楽がデータ化されて変わったのは、音楽の経済的価値だけではありません。
音楽の聴き方が変わりました。
私よりも上の世代が言う音楽の聴き方は、音楽「のみ」を聴くというものです。
レコードの値段は2000円くらいで、今のCDの値段とさほど変わりません。物価が変わったことを考えると、いかに昔のレコードが高価だったかがわかります。
お金を貯めてやっと買ったレコードをターンテーブルに置き、大きなジャケットを手にレコードを聴く。
レコードは片面が20分くらいで終わるものが多いので、B面を聴くためにその場にいるのが当たり前です。
つまり、音楽だけを聴く時間になります。
現代はこういう人はあまりいません。
音楽のデータ化は、持ち運びのしやすさやコピー(シェア)のしやすさももたらしました。
部屋にこもって聴くというよりは、通勤通学中にiPodで聴く、車の中で聴く、といった聴き方が主流になります。
CDになってからは車の中で聴くのは当たり前でしたが、車の中に持ち込めるCDの枚数は、iPodの曲数からすると微々たるものです。
(そういえば、CD20枚チェンジャーがトランクにある車なんかもありました)
もちろん家でも音楽は聴きますが、何かをしながらということが多いようで、確かに昔に比べれば家の中でできることも圧倒的に増えたのです。
ご察しの通り、インターネットですね。
ライブは別ですが、音源で聴く音楽は、このようにBGM化していったわけです。
BGMに高音質を求める人は少ないので、YouTubeくらいの音質でも満足いくわけです。
ゆえに、音楽は無料化してきます。
POPSの1曲は5分前後です。1曲5分、曲を聴くだけに集中する時間をあえて作る人はどれくらいいるのでしょうか。
懐古主義は嫌いですが、曲だけに集中する時間が1日に5分くらいあったら、音楽の聴こえ方は変わります、間違いなく。
今の音楽の聴き方がまちがっているという気はありません。何かをしながら聴く音楽文化だって、それはそれで素晴らしい文化です。
ただ、そうでない、音楽だけに集中するという行為もやってみてはいかがですか、というオススメ情報です。
そこには、作曲家、作詞家、編曲家、演奏家、エンジニア、ディレクター、そしてアーティストのエネルギーの結晶がふんだんに詰め込まれています。
たった5分に、大きな大きなエネルギーを詰め込んでいるから、それはたった5分なのに芸術だと言えるのだと思います。
私はそんな音楽の世界にいることを誇りに思います。
たとえこの先音楽はビジネスとして成り立たなくなっていっても、音楽の普遍的価値は変わりません。
だから、心配することもないし、成るように成るわけですが、、、