今日はガッツリ音楽ネタです。
DAWソフトの普及で、クリエイターを志す人も多くなり、それは音楽業界にとっては喜ばしいことです。
クリエイターと言っても様々なジャンルがありますが、ここでは歌モノのクリエイターに話を絞ります。
なぜなら、今のところ歌モノが最も売れているからです。売れているということは収入も多いということですね。
さて、まず作曲を何からするか、という決まりはありません。結果的に良い曲が出来れば問題ありません。
選択肢としては、
・メロディー
・コード
・リフ
・ベースライン
・リズム
といったところでしょうか。
しかし、以前にも当ブログでお伝えしたように、基本的には作曲に含まれるのはメロディーとコードだけで、それ以外はアレンジの領域になりますので、メロディーとコードの2択としましょう。
で、しつこいようですがコード自体にもコード進行にも実は著作権はありません。もしコード進行に著作権があったら、ブルースのほとんどは権利侵害です。
ということで残るはメロディー。メロディーから曲を作る場合のことを考えます。
歌モノの曲、1コーラスに絞ればその要素はイントロ、Aメロ、Bメロ、サビです。
これも、どのセクションから作っても問題ありません。
ところで、実際のところどこから作られることが多いと思いますか?
多分「サビ」と答える人が多くいると予想します。
普段から良いメロディーを考え続け、ようやく思いついたメロディーは、やっと産み出した「良い」メロディーであるはずなので、それをサビに充てる、ということですね。
全然間違ってません。
しかし、少なくとも私の周りのプロのクリエイター(作曲だけで生計を立てている人)たちの多くは、実はAメロから作ります。
なぜでしょうか。
その理由もこれまた様々ですが、実はシンプルにAメロを先に聞くことになるから、ということが多い。つまり時間順に作るということです。
上記したように、やっと思いついた良いメロディーはぜひサビにとっておきたい、という考え方、その良いメロディーというのは、実際のところ「何が」良いのでしょうか。
売上げランキングのトップに入ってくるような曲のサビ「だけ」を改めて聞いてみてください。
しかも、メロディー「のみ」にしぼって聞いてみてください。
そのメロディー自体が素晴らしい、と思えますか?
多分ムリです。それは単音がならんでいるだけです。音域も、人が歌うので上も下も限られています。
人がメロディーを素晴らしいと思うのは、メロディー自体が素晴らしいというだけではなく、それについているコード、オケ、歌詞、そこまでのA・Bメロの組み立てなど様々な要素を背景に素晴らしいと感じているわけです。
こうなってくると、サビ始まりの曲は別ですが、Aメロから作るほうが確かに時間通りで自然です。サビに向かってどんどん盛り上がっていくように構成するわけです。
もちろんA→B→サビの順にメロディーとコードを組み立てていった後には、何度も何度も手直しをします。
サビまで作った後、B全体をサビのじゃまにならないように、ちょっと動きを抑えたメロディーに変えよう、するとAメロとBメロのつなぎもちょっと違和感があるからここも変えて、あーそうするとサビもやっぱりここを変えたほうが良いな、といった試行錯誤が〆切まで延々と続くわけです。
結果的に、最初に思いついたメロディーは原型をとどめていないこともあります。
それが作曲という行為を仕事にするということです。
ある日キラーフレーズを思いついて、そのまま使う、といったことができるのは、数曲までです。何百曲という曲を作り続けるためには、練り込む作業が必須です。
キラーフレーズを思いつかなかったので、曲が作れませんでした、ということではプロのクリエイターとして失格です。
本当にしつこいようですが、サビから作る事が間違っているとか、その方が質が落ちるということを言っているわけではありません。
ただ、予想以上に「サビからしか作らない」というクリエイターが大勢いるので、別の作り方も試してみる価値が大きくある、と感じました。