自分が卒業した中学は、いわゆる普通の公立中学校ではなく、かといって私立中学でもない、国立の中学校だ。
入学に受験はあるものの、進学校のような雰囲気は少なく、体育祭の3日前に実力テストをするような学校だ(つまり、勉強をさせやすいように、なんて考えていない)。
年間に大きな行事が12個くらいあり、とにかく年中行事だらけで、とにもかくにも充実していた。
ありふれた表現を使えば、個性豊かな学校だった。
自分の人生の中で、この中学校に在籍できたのは、海外に行ったことと同じくらいファインプレイだったと思う。
先日同窓会があり、参加者の何人かは、思い出せないくらい容姿が変わっていた。
残念ながら、その変化は大抵「よくない方向」へ、だ。
とはいうものの、中身は期待以上で、いわゆる「普通」の人があまりいなかった。
別に普通の人が悪い言うわけではない。
単純に、普通じゃない人が好きなのだ。
そんな中学校の思い出は、誇張表現なしに数えきれないほどあるのだが、それらの中で最も思い出に残っているものの一つが「特別授業」。
本当はしっかり名前があるのだが、諸々の理由により、ここでは「特別授業」と呼ぶ。
特別授業の概要
まず、この特別授業は入学して最初のオリエンテーションの月と、長期休暇を除き、1年間毎月1回行われる。
随分前のことなので記憶がはっきりしないが、確か毎月最終土曜だったはずだ。
当時は週休2日なんてないから、土曜も普通に通学していた。
そのうちの最終土曜を、丸一日特別授業に充てていた、というわけだ。
では、なにをするかというと、1年かけて何かを研究し、1年の最後に発表するのだ。
研究項目は、本当になんでも良い。
とりあえず、過去にはこういった研究項目がありました、といった紹介はあるものの、その中から選ぶかどうかは自由だ。
さらに、研究は1人でやっても複数人のグループでやっても自由。
研究内容のバリエーション
こういうと、つまり長期休暇にある自由研究と変わらないと思うかもしれないが、その自由研究は、自由とはいってもちっとも自由ではなかったはずだ。
つまり、基本「学問的」な何かにしなくてはいけない雰囲気が漂っていた印象だ。
しかし、この特別授業で研究項目にあがったものは、本当にバリエーションに富んでいた。
- お笑いがすきなので、お笑いの研究をしてみて、最後にネタを引っさげて漫才
- 中国人がえらく多いので、とりあえず中国語を学び、最後に中国語を披露
- 親からビデオカメラを借りて、映画制作、発表
- 明日の天気と明後日の天気の予報を、様々な方法で行い、テレビに勝つ
- 1年かけて、母親の料理の腕を超え、最後にみんなの前で調理実演
- サザンオールスターズがなぜ売れるのかを研究してみて、できればそんな曲を作ってみる
など、ジャンルもバラバラだ。
研究過程が、これまた面白い
研究のためには、その道のプロに直接話しを聞く必要性もでてくるので、学校外に出て行く事も許されている。
もちろん、インタビューのためのアポも自分たちで電話をしてとる。
中学生なので、インタビューのためのアポをとるための電話でも相当に緊張するし、怒られた人もたくさんいる。
しかし、意外と学校外でサボりまくって、という人はいなかった。
そして上述したように、1年の最後には、研究内容をみんなの前で発表する。
社会人にとって必要なことだらけ
つまりこの特別授業は
自分で考えた研究課題を、
自分で選んだ人と、
自分たちの方法で取り組み、
最後にアウトプットする。
社会に出て、サラリーマンになる人、起業する人、フリーランスで生きていく人、全ての人に恐らく必要なスキルを学ばせる為の素晴らしい授業だった。
今は都合上この授業はなくなってしまったと聞いたが、ぜひああいった授業を全国の教育機関で実施していただきたい。