昨日はステージ演奏の仕事だった。
飲食店での演奏なので、お客さんにも良い感じにお酒が入り、しっかりと(?)盛り上がった。
こういった飲食店での演奏では、演奏の前後にお客さんに話しかけられることも多々ある。
そういうところも、飲食店でのライブの醍醐味で、ありふれた表現を使えば、アットホームな感じ、といったところだろうか。
昨日も演奏後に、結構酔ったお客さんに話かけられて、えらくお褒めの言葉を頂いた。
酔っぱらいは全然嫌いではないので、そこは問題ない。
しかしその内容で、やれやれ、と思ったので、書いてみようと思う。
酔ったお客さんの主張
その人曰く
やっぱり音楽は生だ!今は若者を中心にネット、ネット言ってるけど、あんなものは偽物だ。
まもなくみんなそれに気付いて、ネットも衰退していく。
いまネットを使っている奴は、騙されているだけだ。
というものだった。
ちなみに、その人の年齢は40歳前くらい。サラリーマンだ。
ツッコミどころ満載なので、いちいち書くとキリがない。
ということで、一番ツッコミたいところに絞る。
それは、冒頭「やっぱり音楽は生だ!」というところ。
ちょっとした音楽の歴史
音楽は生が良い。
こんなことは、ネットが普及するよりもずっとずっと、ずっと前から分かっている。
生でない音楽、つまり音源(レコード、CD、データ問わない)の歴史なんて、音楽の歴史からすると、米粒ほどでしかない。
音楽にかぎらず、録音という技術が確率したのは1877年らしい。
これに対して、音楽の歴史は、その起源が不明なほど古い。
アフリカの、とある民族が、狩りでとった獣の骨で石を叩いてリズムをとったのが最初という説が有力な説の一つだが、どう見積もっても相当に古い。
音楽と音源の違い
音楽というのは、基本的に生のことを指すのだ。
では音源は何かというと、録音のことを「レコーディング」という言葉で表しているように、要は「記録」だ。
(レコードが衰退した現代でも「レコード会社」と呼ぶのは、それが理由)
記録したものを複製し、著作権を与え販売し始めた。
それは、音楽「ビジネス」だ。
音楽そのものと音楽ビジネスは比較できない。
どちらが良い悪いの問題ではない。
音楽ありきで音楽ビジネスがあるのだ。
インターネットと音楽ビジネス
インターネットが普及、さらにブロードバンドも普及して、YouTubeを始めとした動画サービスが出始めた時に、日本の音楽業界は、メジャーアーティストのライブ映像を動画で流すことに厳しい制限を設けた。
その理由は、無料動画でライブを流すと、ライブに実際に足を運ぶ人が減る、と業界が見たからだ。
しかし、実際のところ、ライブ集客数は減るどころか、むしろ増えた。
これは、日本に限らず世界中で確認されている統計だ。
想像したらわかるだろう。
ライブに行きたいと思っている人間が、動画をみて満足するわけがない。
むしろ、動画をみて、これを実際に見に行きたい!と思う人のほうが多そうなことくらい分かりそうなものだ。
動画サービスの普及で衰退したのは、音源販売、つまり音楽ビジネスの方だ。
※ライブにも音楽ビジネスの側面が当然ある。しかし、音源による収益に比べると、圧倒的に少ない。音楽ビジネスにおいてのライブは、音源販売促進のための大規模な営業活動という見方だ
思想と現象の取り違い
音楽は生が良い。
これには、少しの反論もない。
しかし、それとネットを悪く言うのは、関係あるようで実は無関係だ。
さらに、その方はネットをなぜか目の敵にしているが、自分の好き嫌いと、実際の時代の流れは別だ。
さらに言えば、その存在(ここでいうネット)があるべきか、なくすべきかということと、実際の時代の流れもほとんど関係ない。
あるべきかなくすべきかは「思想」で、実際に続くかどうかは「現象」だ。
この時代に、本当にネットが衰退すると思っている人がいたとしたら、その人はかなり「イタイ」と思う。