この類の記事は、まあまあの頻度でみかけます。
それは、絶対音感を手に入れたいという人が多くいることのあらわれ、ともとることができるのかもしれませんね。
私は幼少期からピアノを習っていたのが影響したのか、絶対音感を持っています。
絶対音感と一言でいってもその能力値は様々で、救急車の音やブレーキの音もすぐに音名でわかるというハイレベルの人から、音楽的なものであればわかる、というレベルの人もいて、私は後者に近い。
音楽業界に身を置くものとしては、こういった記事を読む時には注意が必要だと言いたいですね。
こういうところです。
嘘が書いてあるわけではありませんが、勘違いしやすい文章です。
モーツァルトと同類ってどういう意味ですか?
同じ人間だから、同類に決まってるでしょう、、、というのはもちろん屁理屈ですが、では一体何が同類なんでしょう。
絶対音感があるというだけで、モーツァルトと同じくらいの能力値がある、というのはトンデモないことです。
だったら私もモーツァルトレベルですか?
この記事にも書いてある通り、ミュージシャンの中には絶対音感を持っている人が少なからずいます。
でもそれは、絶対音感さえ持っていればミュージシャンになれる、という意味では決してありません。
同時に、絶対音感がないとミュージシャンになれない、という意味でも決してありません。
モーツァルトは絶対音感の持ち、且つ有名ですが、絶対音感の持ち主なのに音楽的にまったく成功しなかった人や、絶対音感がなくても大成功を収めたミュージシャンだって山ほどいます。
そんな中でモーツァルトを例に出すと、読み手が勘違いしやすくなります。
こういう記事は、絶対音感はミュージシャンにとって、必ず「あるに越したことはない」能力というスタンスで書かれていますが、一概にそうも言えません。
信じられないかもしれませんが、逆のことも、つまりそれがよくない方に作用することもあります。
それもつまり、絶対音感はミュージシャンにとってとても有用な能力だ、という思い込みがもたらすものです。
この記事では絶対音感は大人になっても身につく、とありますが、とはいえほとんどの絶対音感を持っている人は、幼少期にその能力を身につけています。
幼少期に習う音楽はクラシックが多い。POPSの世界に興味がで始めるのは中学くらいでしょうか。
そしてギターやベース、ドラムといった楽器に興味を持つようになります。
音程がある楽器に関しては、何度も言うように絶対音感があるほうが有利だという先入観がある人が多いし、楽器を始めてすぐの頃は実際、絶対音感のある人の方が成長も早い傾向にあります。
すると、どうなるかというと、鼻が高くなります、、、
鼻が高くなると、成長が明らかに鈍化します。
初速が良いので、自分の身近にいる人たちには褒められるくらいの能力にはすぐにたどり着きますが、当然プロとしてやっていくのには全然無理です。
しかし、自分の周りに褒める人が多すぎる場合の成長の鈍化は、経験上明らかです。
そもそも、絶対音感を持っている人ですらそこらじゅうにいるわけで、それでプロとしてやっていけるのならば、ミュージシャンになるのって意外と簡単だ、ということになっちゃいますね。
◆
絶対音感という能力がミュージシャンにとって有用か、と問われれば、確かに有用です。
しかしオーディエンスは、ミュージシャンの絶対音感の有無で感動するわけもありませんし、ミュージシャンがもつべき能力全体に占める、絶対音感の割合なんて、ぶっちゃけてしまうとほとんどない、といっても良いかもしれません。
(ちなみに、相対音感は必須です)
絶対音感を身につけるトレーニングをしている人、その理由が優れたミュージシャンになることだったとしたら、そんなにコスパの悪いトレーニングは早々にやめて、優れたミュージシャンの演奏を生で聞きに行く方がはるかに有用ですよ。