本格的とか本物という言葉を多用する人が結構いる。
本格的とか本物という言葉を使うからには、その逆も存在することを意味している。
しかし、芸術分野で使われるこれらの言葉は、甚だ疑問が多い。
今日のテーマは、本格的な本物論
芸術分野は順位が付けられない
まず、芸術分野というカテゴリーの性質を理解する必要がある。
芸術分野といっても様々だが、どの芸術分野も、いろんな意味で順位がつけにくい。
これは、スポーツと比較すると分かり易い。
例えば、陸上競技、100m走において、ルールに従って競った結果であれば、誰がなんと言おうと、タイムが短いほうが優秀だ。つまり1位だ。
「タイムでは負けたが、実際のところあいつの方が実力は上だった」
みたいなことを言うと、スポーツの根幹が揺らぐ。
では、芸術分野ではどうだろうか。
例えば、オリコンのウィークリーランキングでは、今週モーニング娘。の「冷たい風と片思い」が1位だ。
これをもって、今日本一良い曲はこの曲だと断言できるだろうか。
また、このアーティストが日本一のアーティストだと決められるだろうか。
そうはいかない。
なぜなら、そのランキングは、音楽の「売上」だけのランキングであり、音楽はそれだけではないからだ。
典型はクラシック。
クラシックがオリコンに入ることはまずない。
では、クラシックは音楽的にほとんどのJPOPの曲より劣るのかと言えば、そんなことはない。
売れなくても素晴らしいものもあれば、売れてもダメなものもある。
芸術の良さを決めるのは「個人」
では、素晴らしいかダメかを決めるのは?
それを判断するのは個人に委ねられているから、単純に順位を決められないのだ。
話が前後するが、スポーツではこうはいかない。
お前はあいつが1位だと言うが、おれはあいつが1位だ、なんてことはないだろう。
勝負や競技に勝った者が1位(または上位)だ。
では、本格的とか本物というのは、芸術分野では何を意味するのか。
正直に言うと、全く意味が無い。
上記の逆になるが、クラシックよりモーニング娘。を好きだ、と言う人も当然いて、その意見は尊重されるべきだ。
YouTubeなどの普及により、現代流行りの曲、昔流行った曲、ジャンルなどを飛び越えて曲を簡単に聞くことができる時代だ。
よく見られるYouTubeのコメントに「昔のこういう曲を聞いて、本物の凄さをわかってほしい」といった類のものがある。
それは、限りなく個人的な「本物」だ。
それを言うなら、「本当に自分は好きな曲はこういう曲だ」と書くべきだ。
本格的、本物なんて一般化することは到底できない。