日々じゃーなる

日々の生活でおもったことをなんとなく、でも結構まじめに綴るブログです。 趣味は読書とビリヤード。仕事は音楽関係。

国岡商店はブラック企業なのか

話題になった本、百田尚樹氏の「海賊と呼ばれた男」を読了した。

 

海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)

海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)

 

 

 

海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)

海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)

 

 読んでいない方のために、簡単にあらすじを説明すると、今も街中のガソリンスタンドで見かける出光の創業者の話で、石油という現代社会にとっては必要不可欠なエネルギーを中心とした会社を創業した出光、その創業者の波乱万丈を描いた、ノンフィクション風作品。

ノンフィクションの体をなしているものの、基本的には実話だ。
作中、田岡商店が出光興産を、国岡鐵造が出光佐三を表している。
他に出てくる固有名詞は、実名も多い。
なぜ企業名と主人公だけは実際と変えたのかはわからないが、まあいろいろあるのだろう。

 

シンプルに感想を述べれば、非常に面白かった。
利潤追求が当たり前の企業トップが、国の役人よりも国ことを考え、その破天荒さ故に、これでもかというほどいじめぬかれる。
それでも固い信念を貫き通す主人公には、何度となく心を打たれる。
 

ブラック企業とは

 
さて、ネット上に見られるこの作品に対する感想の中に、「今でもこのやりかたをしていたら、ブラック企業だ」というものがあった。
国岡商店は、現代に照らし合わせればブラック企業なのだろうか。
 
ブラック企業と言われる理由だが、これは国岡商店の社員が、とにかく働きまくるからだ。
状況によって、休みもなく、時間も関係なく、とにかく働きまくる。
業務内容も、上からの指示があれば何でもやる。
 
当時労働基準法というのがあったかどうかは知らないが、少なくとも現代の労働基準法に照らし合わせれば、違法になることは間違いない。
 
しかし、それだけでブラック企業と呼ぶのは早計。
 
そもそも、ブラック企業の定義はあるのかと思い調べると、ネット上にはこういった説明があった。
 
若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業を指す。
将来設計が立たない賃金(貧困、ワーキングプア)で私生活が崩壊するような長時間労働を強い、なおかつ若者を「使い捨て」るところに「ブラック」といわれるゆえんがある。
ウィキペディアより抜粋)

 

この説明がほぼ正しいという前提で言うと、国岡商店がそれにあたる箇所はあまりない。

過重労働とは、強制的にやらされるものを指すが、国岡商店の場合は、社員が自主的に重労働を引き受ける。「過重」かどうかの判断は、労働している本人にしかできない。
それに、離職に追い込むといったこともない。むしろ、かなり経営的に厳しい時にも、まったく馘首しなかった。若者の使い捨てという言葉は全く当てはまらない。
 

田岡商店がブラック企業に見えてしまう理由

 
では、なぜ国岡商店がブラック企業と呼ばれることがあるのか。
それは、重労働=ブラック企業という風潮があるからだ。
重労働=ブラック企業という概念が世論になってしまった為に、労働基準法の遵守が強く叫ばれるようになった。
重労働だけでなく、低賃金や、時間外労働、これらの事実がブラック企業の温床になっているのだろうか。
 

労働の第一義

 
労働は何の為に?という質問に、なんと答えるだろうか。
第一義がお金だと、上述した等式は批判の対象になり得る。
しかし、労働は多くの人が共存していくための分担作業だ、と少なくとも自分は思いたい。
 
人はみな違うから、各々の得意分野を発揮し社会に還元することにより、より多くの人が共存していけるようにするシステムが労働だ。
その仲介としてお金がある。
 
お金が大事でないというわけではない。断じて無い。
ボランティアで労働が可能ですか、となると、それは難しい。
しかし、大切なのは、労働の「第一義」は何か、ということだ。
 
つまり、第一義をしっかり認識していれば、いわゆるブラック企業にはならない。
重労働、低賃金、時間外労働がブラックなのではなく、それをする従業員や社員が過重労働だ、低賃金だ、帰社したいのに帰れない、ということがブラックなのだ。
 
企業がそれらを強制ではなく自主的にさせることができれば、すざましい生産性を上げることができるだろう。
それに成功した例が国岡商店なのだろうが、これを企業が見習うときに、「自主的にさせた」という部分を軽視すると、もれなくブラック企業の誕生だ。
 
時代とともに働き方も変わる。
いや、働き方が時代を変えているのかもしれない。
しかし、だからこそ労働の第一義だけは何度も再認識する必要があるのではないだろうか。
 
労働とは何か。
働くとはどういうことなのか。
 
それを見つめなおす機会は、多くあればあるほど良いと思う。

 

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