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歳を重ねると、経験を積めますが、油断しているとそれと同時に何かを失います。 油断していなければ大丈夫なんでしょうが、油断していることに気づくのはいつも遅い。
上の記事をみて、本当に納得しました。 私は仕事柄、日々売れている音楽をチェックしています。現代であれば、CDの売上だけでなくダウンロードやストリーミングでの人気作品から、動画サイトの再生回数ランキングまで調べなくては仕事が成り立ちません。
しかし考えてみれば高校くらいまで、こういった作業、つまり流行っている音楽を日々チェックするというのは、仕事でもなんでもなく、ただひたすら新しい音楽を求めてやっていたことにすぎません。 そこに「何かの役に立つから」とか「自分の音楽性を高めるため」みたいな聞こえの良い目的は全くなく、ただ気の赴くままに音楽を探していただけです。
今はそれが仕事、つまり「やらなくてはいけないこと」になっています。 嫌いなことではありません。しかし、あの頃のように、前のめり気味な探し方をしているかといえば、そこまでではないとも思います。
私のように、仕事だから好きだろうが嫌いだろうがやらなくてはいけない人ならば、今でもちゃんと新しい音楽を探し聞いていると思います。 しかし、そうでない人は最近の音楽を探しているでしょうか。
音楽への向き合い方は様々です。 プロにならずとも、週末だけライブハウスで演奏したり、曲を作って動画サイトにアップしたり、といった音楽へのアプローチは誰にも否定されるものではありません。 一方、そういう人の中でどのくらいの人が新しい音楽を追い求めているのかは疑問です。
音楽は好き嫌いがあるし、それは人によってかなり個人差があります。オリコンのトップチャートに入ってくる曲でも全く心動かない人もいれば、数日前に街でみかけたストリーミュージシャンが歌っていた曲に感動する人もいます。 しかし、音楽においての入口は、「聞くこと」です。
つまり、最近の音楽を聞いてみて、自分の趣味にあわないと言うのは個人の自由です。 しかし、聞いてもいないのに、最近の音楽には興味がない、というのは、食わず嫌いです。 聞いてもいない音楽を嫌いと言う人は、音楽好きを語ってはいけないでしょう。 それは、音楽的差別です。最近の若者を批判する割に、最近の若者事情をなんにも知らない人と何ら変わりません。 繰り返しますが、聞いた後ならば問題ないんです。
ネットやテクノロジーの普及によって、以前よりはるかに音楽のつまみ食いがしやすい時代です。 タワーレコードで視聴してからCDを購入できるというサービスを見たときはめちゃくちゃ驚きましたが、いまやそれは自宅でできるのが当たり前、というか多くの曲が無料でフルコーラス聞けます。 それが音楽業界や文化という側面で良いことなのかどうかはさておき、少なくともリスナーにとっては音楽を環境的にはとても探しやすい時代であることは間違いありません。
そんな時代において、新しい音楽探索を全然せず、昔好きだった曲や、昔から贔屓にしているアーティストばかりを聞いている人は、少なくとも音楽好きとは言えないのだと思います。