学生時代にアルバイトは山ほどしたので、それまで含めると、今までに面接を受けた回数は50回を超える。
印象に残っている面接を2つ紹介する。
海外の楽器屋
海外に住んでいた時、渡航直後は英語がうまく話せないので、おのずと働くことができる職種も限られていたが、英語力があがるにつれて、職種の選択肢が増えていった。
そんな中で目をつけたのが楽器屋。
音楽を愛する人間としては、毎日楽器を見ながら働くというのは理想的だし、楽器の知識も増えるし、従業員割引もきくので、楽器屋勤務はメリットが多い。
ということで、飛び込みで大きな楽器屋に行き、働かせてもらえないかと頼み込むと、運良く面接をしてくれた。
接客業の経験はあるものの、楽器屋で働いたことはないので、経験がアドバンテージとなるアルバイトにおいては厳しいかもな、と思って、だめもとで面接を受けていた。
その楽器屋はクラシック系のピアノ、バイオリンなどの楽器からLMのギター、ベースなども売ってある大きな店。
ということで、どちらの楽器でも、そして海外でも有名な日本の誇る楽器メーカーであるヤマハの製品も多数販売していた。
自分のメイン楽器はピアノとギターで、どちらにおいてもヤマハは有名。
ということで、
「日本人でピアノとギターが弾けるのならば、ヤマハ製品を売ってくれるだろう」
という、えらく安直で大雑把な理由で面接に合格した。
今その面接を振り返って面白かったと思うのは、面接時に時給や勤務日数など、通常ならば最低限確認するところの話が一切なかったことだ。
これらがなかったら、後々面倒なことになりそうだが、結果面倒なことにはならずに、ストレスも一切感じず、期待に応えてヤマハ製品を日本人としてガンガン売りまくっていたので、良い思い出しかない。
あれから10年以上の歳月が流れているが、その時に知り合った同僚スタッフや店長は、いまでもメールのやり取りをしている。
日本の楽器屋
帰国後、その経験を活かして楽器屋での働き口を探した。
楽器屋は上にかいたように、音楽人にとっては結構理想的な職場なので、一般的なアルバイト情報誌に求人が出ていることはなく、またまた飛び込みを試みる。
数件行って断られたのち、ある楽器屋が面接をしてくれた。
店長が面接を担当したのだが、この面接がこれまた印象深い。
上に書いた様に、海外で働いた楽器屋では、最低限の確認もなく採用となったのだが、この楽器屋では、その最低限をさらに下回る勢いの情報の薄さで、面接が終えた後でも時給はおろか、いつ、何時から勤務すれば良いのかもわからなかった。
では、面接では何を話したのかというと、まずギターを持たされて、
「何か弾いてみて」
と言われた。
強面の店長ということもあり、人生で5本指に入るくらい緊張した。
なんとかそれを乗り切ると、店長の楽器屋店員論が始まる。
「楽器屋の店員は、戦士だ。殺すか殺されるかの中で戦って行くんだ。」
「試奏を頼まれた時に、チューニングをするだろ?そのチューニングが終わって、あっているかどうかを確認するために10秒くらい弾いてみる時が勝負だ。
この時に、相手に絶対に勝て」
店員が、何が嬉しくて客と殺し合いをしなければいけないのか、客と何を競って勝つのかさっぱりわからなくて混乱した。
面接は、受けるだけではもったいない
面接は、雇用するほうが雇用される方をチェックするために行うものだが、そこでは一定のコミュニケーションがあるので、実は雇用される方が雇用する方の体質を知るきっかけにもなる。
上に紹介した2つの面接を含め、面接のときに相手に対して抱いた気持ちは、その後働き始めて感じた印象に近いことが圧倒的に多い。
そもそも面接時点では、パワーバランスはフラットであるべきなので、過剰に媚びへつらう必要はない。
面接を受ける時は、こちらが雇用する方をチェックしにいっている、くらいの気持ちでのぞめば、面接を受ける意義もより深まる。