音楽の世界に入って、ミュージシャンのプロと呼ばれる人たちへの見方が大きく変わった。
どの世界でもそうだろうが、入ってみないと気づかないことが多くある。
音楽の場合、一般の人に見られる職業なので、プロとしての仕事も見えていると勘違いしがちだ。
確かに、専門職のなかでは露出の多さゆえに、そのプロとしてのすごさが目に見える部分もあるが、もう少し一般論的に、ミュージシャンのプロ、というのを見てみたい。
ちなみに、本記事はミュージシャンの中でもプレイヤー(楽器演奏)にフォーカスをあてている。
ミュージシャンのプロは、リズムが良いことと、間違えないこと、この2つが最も重要なことだと言える。
リズムが良いこと
独りで演奏するのならいざしらず、普通はバンドで演奏する。
クラシックと違い、指揮者がいるわけではないので、プレイヤーはリズム隊(主にドラム、ベースを指す)を土台にリズムをあわせる(これを縦がそろう、と表現する)。
音楽の三要素はリズム、メロディー、ハーモニーだが、このなかでリズムだけは、その重要性を把握しにくい。
昨今のレコーディングはコンピュータを使って行い、その演奏結果を視覚的に確認することができるが、アマチュアとプロはこれをみれば一目瞭然。
自分が弾いていると思っているタイミングと、実際に弾いているタイミングは、意外にずれている。
それは、自分の声を録音して聞いた時に、自分の声ってこんなの?と感じるのと似ているかもしれない。
間違えない
これは、当然と思うかもしれないが、音楽においては意外に当然でないと思われることが多い。
例えばギターの場合。
実際のレコーディングで、ギターソロがある曲の場合、その箇所にかける時間は、その他のバッキング(伴奏)に比べるとごくわずか、しかも最後だ。
ギターソロの録音段階になると、帰宅する関係者も多いくらい。
ギターソロが重要じゃない、という意味ではないが、それよりも、曲の大半を占めるバッキングを、間違わずに正確に弾くことの方が重要視されるのは事実。
ジャンルにもよるが、最も普及している「歌もの」の場合、各楽器のソロの時間は、それ以外のバッキングの時間に比べるとずっと短い。
この時間と重要度は比例するので、実は楽器演奏の技術習得は、とにかくバッキングをしっかりすることからするべきなのだが、とにかく地味なので、テクニカルな演奏の練習に時間を費やしてしまうことが多い。
こうやって運良くプロの世界に入った人は、その世界でバッキングを一から叩き直される。本当に嫌というほど叩き直される。
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もし読者の方の中に音楽のプロになりたい、という夢を持っている人がいたら、とにかくリズムとバッキングを練習する時間を増やすことだ。
人気が最も高いギターならば、単音弾きよりもとにかくバッキング、様々なバッキングパターンをクリックに合わせて録音し、縦がきっちりそろっている演奏になっているかどうかを常に確認しながら弾くこと。
プロになることがあったら、どっちにしてもここは叩き直されるので、プロになる前にするか、なった後にするかだけの差。
しかも、プロになる前のほうが、はるかに練習時間を取れる。