音楽、ことPOPSのライブでは、トラブルがつきものだ。
アマチュアが小さなライブハウスで行うライブの場合は、一晩で4,5バンドが出演することもあり、トラブルが起きやすくなるのは致し方ない。
しかし、ホール級の場所でコンサートをする場合ですらトラブルは起きる。
そのアーティストのために、おびただしい数のスタッフが動き、ゲネプロ(本番と全く同じことを最初から最後まで通すリハーサルの最終段階)まで行っているにも関わらず、本番でトラブルが起きる。
要するに、トラブルは「ありき」で考えるべきだ。
もちろん、トラブルは無いに越したことはなく、その確率を下げる為の丁寧な準備は必要。
逆に言えば、想像できる範囲のトラブルが起こった時に対処できないのは、それは単なる準備不足でしか無い。
ギタリストであれば、弦。
普段どれだけ弦を切ってない人でも、本番で切れてしまうことはある。
それは緊張により力が入ってしまうというのもあるが、本番会場の温度や湿度など本人ではどうしようもないことも含まれる。
これを想像してさえいれば、予備のギターを用意する、それが予算としてできなければ替えの弦と弦を変えるための道具を用意しておく位のことはしておかなければいけない。
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さて、繰り返すが、それでもトラブルは起きる。
自分の見たトラブルでは、シンガーソングライター(十分なキャリアを積んだ人)のライブ始め、ワンストローク目で、何とネックがサウンドホール側にスライドして、演奏不能状態になった、ということがあった。
これもゲネプロまでしっかりしていて、その段階ではギターの不具合の前兆は全く無かったということだ。
こういうときに、演者は人間力を問われる。
ここでいう人間力というのは、演者は誰のために、何のためにそこに立っているのか、ということを認識した行動がとれるかどうか、だ。
下の下は、言い訳。
アマチュアにはありがちだが、「今日は喉の調子が悪くて」といったMCをするボーカル。
オーディエンスは、そこにお金を払い、それと引き換えに得る満足感を求めている。喉の調子が悪いなら仕方ないね、とはならない。
喉の調子が悪いというのは本人の体調管理不足でしかないが、それを百歩譲って仕方ないことだったとみなしても、それを言い訳にすることの意味はゼロ、むしとマイナスだ。
喉の調子が悪く、例えばそれが枯れ気味の声になっているのならば、「今日は枯れた声でさみしげな歌い方をしてみよっかな」といったことを言ってでも、なんとかカタチにするよう試みる。
ほかにもやり方はたくさんあるだろう。
冒頭の記事は、まさしくピンチをチャンスに替えた良い例。
結果だけを見れば、そのトラブルがなかったらニュースにすらなってなかったのだ。
トラブルがあり、それの回避方法がすばらしく、結果満足感を与えることができた例だろう。
上記した自分の見たシンガーソングライターのトラブルは、ネックが故障した瞬間に「このようにギターを弾くのに力を入れすぎると、ぎたーがかわいそうなので、注意しましょうね」という軽快なMCで予備のギターに交換してライブを再開した。
これも素晴らしい。
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演者は誰のために、何のためにそこに立っているのか。
それを心の底から意識することは、人前に立つ人間の最低条件だ。
原因追求や言い訳は、後回しで良い。
www.famo-seca.club
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