スタンフォード大学監獄実験をご存知でしょうか。
詳しくはウィキペディアに譲りますが、簡単に説明します。
1971年にアメリカの名門スタフォード大学で行われた心理実験です。
なんとなく選ばれた21人を、監獄の看守役11人と囚人役10人に割り振り、どんな心理作用や変化があるのかの調査を試みた実験。
結果的には、「役」を大きく超えて、本当に看守役が暴力を振るうようになるし、囚人役は服従するようになります。
継続は危険ということで、2週間の予定が6日で中止となりました。
この実験を元にした「es」という映画もあるので、興味がある方はぜひ御覧ください。
さて、役を与えられると、たったの6日で支配層と被支配層に分かれてしまうくらい、人の心は脆いものです。
この実験では、服装から態度まで徹底してリアリティーを求めたそうです。それが実験途中中止という結果をうんだのは間違いないようですね。
しかし、これくらい徹底している状況はあまりないものの、ある程度までの環境は日常に溢れています。
特に組織には多く見られますね。
例えば服装。制服があるような職場の場合、その役職によって服装を変えていることは多々あります。
それはアルバイト間ですらあって、バイトリーダーとその他のアルバイトの服装が違う、といった具合です(経験あり)。
服装に関しては、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教もそうでしたね。
幹部と呼ばれる人たちはピンクや緑、そうでない人たちは白だったと記憶しています。
さらに、言葉遣いに関しては、ありとあらゆる組織で敬語が使われています。
日本においては、掛け算の九九の重要性と同じくらい敬語も重要と言っても過言ではないでしょう。
敬語を使われる方、使う方にという分かれ方をした場合、それが要因で、双方に心理作用があるのは間違いありません。
それは、組織の統一という意味では良いことでしょうが、本音を言わせるという意味では壁になります。
上の立場の人間は、言いたいことは何でも言いなさい、と口先では言いますが、その命令口調で言われて、はいそうですか、では言わせてもらいますね、となる場合は殆どありません。
仮に言えたとしても、いつも敬語を使われている方が、それを胸中穏やかに聞くことは難しいでしょう。こちらも心理作用です。簡単に言えば、生意気言いやがって、となっちゃいます。
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グローバルな時代に対応するべく、社内の会話が全部英語、という会社もありますが、社内の会話をすべてタメ口、つまり敬語禁止という職場は聞いたことがないので、その心理作用はとても興味深い。
これを言うと、取引先など外部に対して敬語を使えなくなる、と懸念する声をよく聞きますが、そんなことはまずありえない、と断言できます。
なぜなら普段から日本人は、敬語を細かいレベルで使い分けることに十分に慣れているからです。
年上でも家族や恋人ならタメ口でしょうし、年下でも接客ならば敬語になります。
また、仲の良い先輩に使う敬語と接客で使う敬語もだいぶ違います。先輩が家に遊びに来て、いらっしゃいませと言う人はあんまりいないと思います。よそよそしいったらないですよね。
それらの使い分けは誰かに習ったものではないでしょう。
せめて社内だけでも敬語禁止の会社があったら、ぜひ観察してみたいものです。