ルビンの壺が割れた《キャンペーン版》期間限定無料
- 作者: 宿野かほる
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/07/14
- メディア: Kindle版
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期間が限定されているとはいえ、無料です。
早速購入(といっても0円ですが)して読みました。
文語体ではなく口語体で書かれていること、2人のやり取りの舞台がSNS(Facebook)であること、そんなに長くないこと。
これらの要因があってか、とても読みやすい小説です。
電子書籍未経験の人は、これを機に読んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに、念のためですが、Kindleは専用の端末がなくてもスマホやタブレット、コンピュータのアプリで読むことができ、それらのアプリは無料なので、本自体も無料の場合は、1円もかかりません。
無料で配信するという手法を選んだのには理由があります。
そもそもこの小説の作家は無名で、突然新潮社に送られてきた作品だそうです。
音楽と同じように売り上げが下降の一途を辿る出版業界ですが、発売される作品数はあまり変わっていないので、当然売れない本が大量に出てしまいます。
結果、街の本屋で平積みにされるのは、よほど売り上げが期待される作品でない限り1日、2日で、そのあとは背表紙しか見えない棚に1冊か2冊、そのあとは返品、ということになります。
無名の作家が書いた本の内容がいかによく、それを知った出版社や本屋店員があの手この手を使って広告費のあまりかからない宣伝をしても(ポップや帯など)、平積み1日では無理があります。
ならば、ということで、まず帯に書く文章にこれまで以上に力を入れたい。
良い帯の文章はできるだけ多く選択肢から選ばれるもの、ということで、一般応募です。
もちろん内容がわからないと帯は書けないし、発売前なので有料にもできないから、無料配信です。
それから、こういった企画をやっている、つまり発売前に無料で全文を配信している、ということ自体に話題性があるので、売り上げにつながることが期待できる、というもの。
当然の懸念で、無料で読めてしまうとお金を出して買う人が減ってしまう、つまり売り上げが減るということがあります。
しかし、このマーケティング手法は音楽の世界では結構うまくいっています。
日本は著作権構造が複雑なので、いまだ足踏みしている組織もあるようですが、音楽市場世界一のアメリカは、発売前にフルコーラスのMVをYouTubeにアップし、発売日までに「話題になること」を優先します。
発売日前に、パロディー的な動画や替え歌みたいなものすら出回るくらいです。
統計上は、この方法で売り上げが下がることより上がることの方が多いようです。
また、日本でも最近はコンサートで写真、動画OKというものも結構でてきましたが、これも後に販売されるDVDの売り上げが減る可能性よりも、それが拡散されて売り上げアップに繋がる可能性の方が大きい、という統計を受けての変化です。
この辺の感覚は、素人なりに知っておかないと、時代に取り残されそうですね。
個人がコンテンツを発信するのが容易になった現代では、とても重要なマーケット感覚だと思います。