すごい時代です。199円ですよ。
出版業界もデフレか!と思ってしまいますが、出版社/メーカーが「Amazon Publishing」となっているので、KDP(Kindle direct publishing)を使っているということ何でしょうか。
私は音楽業界の人間です。
iTunesストアでの音楽配信が開始されて、Tunecoreのようなサービスを使って自分で曲を売っていく手法ができましたが、それに近いものなんでしょう(おそらく)。
わかりやすい特徴は、とにかく分配金がよいこと。
レコード会社や事務所を通した場合、キャリアにもよりますが、実際に作り手(作曲者や作詞者)に入ってくる印税は、おおよそ売値の5%くらいです。2000円ならば100円ですね。
これが、Tunecoreを使っての配信だと、60%くらいに跳ね上がります。2000円ならば1200円。えらい違いですね、
もちろん、音源制作にあたって、レコード会社や事務所がやってくれる
- 企画
- 制作
- 宣伝
- 製造
- 販売
を、全て自分主導で進めなければいけませんが、逆にそれらができるスキルがあったり、楽しめたりする人にとっては、良いことづくめです。
それに、テクノロジーの進化もあり、これらが個人でしやすくなったというのもあります。
企画は自分でなんとか(まあ、ここが難しいんですけどね)、制作はDAWソフト、宣伝はネット(サイト、SNSなど)、製造はCDプレス工場に自分で注文するか、配信のみなら不要、そして販売も上記したTunecoreをつかう、といった具合です。
もちろん、レコード会社や事務所とチームになって作品を作り上げる、というメリットがないわけでもないし、たくさんの人が関わるのでクオリティーも高いものになることが多いのですが、少なくとも選択肢があること、最初のハードルが低いことは良いことですよね。
話が音楽ばかりになりましたが、KDPにも近いものを感じます。
こういったサービスがない時代に、いくら読書が好きでも、自分で何かを書いて販売するということなんて全く考えていなかったという人のうちの数パーセントが、「書いてみようかな」と思い行動を起こせるというのは、素晴らしいことですよね。
ちなみに、出版界が上記音楽業界と近いものだったらという前提で書いています。
冒頭で紹介した本の筆者である佐々木俊尚さんは、これまでもたくさん本を出していて、その多くは大手出版社経由ですので、今回の作品もこれまでと同じようにどこかの出版社を通じて販売することもできたはずです。
が、あえてKDPで、という選択肢を選んだのが今回で、値段としても絶対に(そう、絶対に、です)ありえない値段が設定されているところなんかも、なにか「実験的な挑戦」といった雰囲気があります。
(深刻な理由がもしあったら、ごめんなさい)
多分こういう理由での値段なので、安い金額に見合った内容ではなく、めちゃくちゃ本気の1冊です。値段に「0」がひとつ足りないと思ってしまう内容です。
タイトル通りメディアをとりまく最新の状況や今後の見通しが、とてもわかりやすく、実例をあげながら紹介されていて、一気に最後まで読めます。
メディアに興味がある人はもちろん、電子書籍未経験者や、お金がない人(!?)にもおすすめです。
考えてみれば、電子書籍なので購入はスマホでタッチするだけ、読むのももちろん場所時間を選ばないし、購入費用も安いので、結果的には購入する方にとってのハードルも下がっていますね。