このニュースを見て思い出したことがあったので、自分の記録代わりに投稿しておこう。
花火大会の帰りのバスで
自分が小学生の頃、地元の花火大会に行った帰りでの出来事。
このニュースと同じく、バスに乗っていた。
花火大会の帰りなので酷い混みようで、席はもちろん、立ちの乗客もあふれんばかりの状況だった。
そんな中、運良く自分は後方窓側の席に座ることが出来た。
これ以上入らないくらいまで乗客を乗せたあと、バスはゆっくりと発車した。
花火大会の帰りというのにもかかわらず、えらく静かな車内だった記憶がある。
例の音が響く〜事件の幕開け
発車して次の停留所に向かう中、例の音が車内に響いた。
そう、「つぎとまります」ボタンの音だ。
べつにこの段階では、何の問題もない。
数分後、停留所にゆっくりと停車して降り口の自動ドアを開けると共に
「◯☓です、お降りのお客様をお通しください」
と運転手がマイクで話す。
ところが、
誰も降りようとしないのだ。
「お降りのお客様いらっしゃいませんか?」
と運転手がマイクで確認する。不思議な静けさが社内を包む。
仕方ない、といった感じで、自動ドアを閉め、バスは次の停留所へ向かう。
再びあの音が〜嫌な空気と嫌な予感
するとすぐにあの音が響く。
なんとなく嫌な空気が車内に立ち込める。
それでも、いや、だからなのか、静けさは保たれたままだ。
少しだけ心拍数が上がった気がした。
まもなくバスが停留所にとまる。
前停留所と同じ動作と同じセリフ、、、そして同じ状況。
つまり、だれも降りないのだ。
明らかに空気が重くなった。
悪戯なのか、間違いなのか、故障なのかと各々が心の中で考えている様子が手に取るように伝わってくる。
そして、自分も周りと同様、何なんだろう、と思い、なぜか緊張していた。
バスはドアを閉め、再び発車する。
見てしまったもの、それは本当は見たくなかったもの
ここで自分は見てはいけないものを見てしまった。
同時に、これまでに起こったことの原因がわかってしまった。
ふと前の席に座っている乗客に目を向けると、窓枠に首をもたげて寝ている。
その側頭部が、窓枠に設置されている「つぎとまります」ボタンに触れている。
発車後、バスの揺れにより、その寝ている乗客の頭も揺れ、ボタンにあたる。
そしてあの音が響く、、、
これか!これがこの謎の真相だ!
寝ているから、当然自分がボタンを押していることになんて気づかない。
そして、もちろん降りるわけない。
悪くないのに感じる罪悪感
混雑した車内で、その詳細を視認できたのは自分だけのはずだ。
しかし、今ならいざしらず、小学生の頃は気が弱く、そのことを寝ている本人や周りの大人に伝える勇気もなかった。
それがかえって、罪悪感に似たようなものを感じさせた。
できることなら、誰かに気付いて欲しかったし、この乗客にも目覚めて欲しかった。
沈黙の生んだ結末
しかし、そんな願いは実らず、バスは停留所へ。
バスの自動ドアが開く。
運転手が降りる乗客を待つ。
沈黙。静けさ。
・・・・・・・・
「誰も降りないよ、だって寝てる人の頭がボタンにあたってるだけだもん」
と心のなかで泣きそうになりながら訴える。
その直後、
「いたずらはいい加減にしろよぉー!!」
と運転手が、音が割れんばかりに叫んだ。
その後に来た静けさの重さは、筆舌に尽くしがたい。
自分だけは、真相を知っていた。
知りたくもなかった真相を。
自分は悪く無いはずだ。
いや、運転手も含め、誰も悪く無いはずだ、、、多分
結局叫び声で例の客は起きて、その後はそういったことは起こらなかった。