家にこもれば、ギターやベース、ピアノの練習をしている人にとっては絶好の練習時間を作れます。
こういう発想で、楽器の練習に励んでいる人も多いのではないでしょうか。
音楽関係者としては嬉しい。
さて、楽器の練習の時に気をつけてほしいことがあります。
それは、何を鍛える練習なのか、ということをちゃんと認識しておく、ということです。
例えばピアノにおけるハノン、ギターやベースにおけるスケール練習。
これらは端的に言ってしまえば、筋トレです。
楽器演奏の時につかう筋肉は、日常生活では使いません。
だから、繰り返し弾いて筋肉を鍛えるのです。
パワーも多少必要だし、筋肉をコントロールできるようになる、ということが重要ですね。
ただし、これだけで楽器演奏がうまくなることは絶対にありません。
楽器演奏はスポーツと違って、その筋肉を使って何を演奏するか、というところまでがセットであり、しかもその演奏には正解がありません。
走るための筋肉を鍛えたら、走るのが速くなります。これは結果に直結します。
でも、演奏するための筋肉を鍛えても、それは筋肉が発達しただけです。
ステージでハノンやスケールを披露する人はいないでしょう。
音楽の場合は、ハノンやスケールがどれだけうまく弾けても、それは基礎練習です。
発想が逆にしましょう。
筋肉を鍛えたら良い演奏ができる、ではなく、
良い演奏のために、筋肉を鍛えるんです。
似ているようで全然違います。
ちなみに、弾く内容が決まっていて、その通りに弾けば良い、という状況だったら筋トレだけで事足ります。
ただし、それだけで成り立っている人って見たことありません。
いわゆる「センス」とか言われるところですが、つまりどういったフレーズを弾くのか、ということには正解がありません。
ここを鍛えるのは、普段から「深く」音楽を聞いているかや、価値観や、精神状況や哲学、色々なことを総動員します。
そんな難しいことを考えて演奏している人はいないと思いますが、大切なのは、それが本人固有なもの、というところで、二人と同じ人間がいないという個性、アイデンティティーの部分になるわけですね。
フレーズの練習をしたら、それは同時に筋トレにもなっています。
だから、実際に弾くフレーズの練習をすると筋トレにもなるし、実演の練習にもなって一石二鳥です。
ただし、やっぱり筋肉はどこまでも鍛えられていたほうが良いことも事実です。
それだけ演奏の選択肢が増えるわけですからね。
繰り返しますが、選択肢が増えたことと、演奏が良くなることはイコールでない、というところを勘違いしないようにしましょう。