前回は、ミックスの前にはオーディオ化したほうが良い理由を説明しました。
今回は、オーディオ化するうえでの注意点です。
目次
音質、音量バランス関係はすべてリセット
ミックス作業は、素のデータから行います。
素のデータというのは、録音したまんまの音、ということです。
エフェクト類は、インサート、センドリターン問わずまったくかけない。
PANは真ん中。
音量はピークを超えていない常識的な大きさ。
なぜ素のデータを使うのでしょうか。
それは、作業工程が細分化されているからです。
今のように、一つのDAWソフトでオーディオ録音、MIDI録音(打ち込み)、ミックスまでできるようになる前までは、音質、音量関係のバランスは、この工程でしか調整できなかったんです。
担当するのはエンジニア。
エンジニアとクリエーターは、まったく職業が違います。
まったく曲を作れないエンジニアさんはいっぱいいます。
それが仕事ではないので、別に構わないのです。
音楽制作は家を建てることに例えられることがあります。
音楽におけるクリエーターは、家のデサインです。
音楽におけるエンジニアは、大工さんです。
大工さんが家のデザインをできるかといえば、難しいでしょう?
それまでにかけているエフェクト等の意味はない?
だったら、これまでトラックにかけていたエフェクト類は、どうせこの工程でリセットされるので意味がないのか。
正直に言ってしまえば、「ほとんど」ありません。
ほとんどということは、少しくらいはある、ということですね。
その意味をあえて2点あげてみます。
ひとつは、曲を作っていく過程での自分のモチベーションを上げるため。
いろんな楽器を録音したり打ち込んだりしていくと、音が楽曲に近づいていきます。
その過程が、曲作りのモチベーションにあたえる影響は大きい。
自分にある程度酔えないと、曲作りってなかなかすすみません。
自分に酔うためには、エフェクトゼロでは厳しい。
言葉は悪いですが、自己満足のためにエフェクトを使うのです。
もう一つは、エンジニアさんにイメージを伝えるため。
これは、エンジニアさんとアレンジャーやエンジニアさんの関係にもよります。
場合によっては、アレンジャーさんが思い描くようなミックスをエンジニアさんに伝えたい、といったことがあります。
その場合、素のデータとは別にアレンジャーやクリエイターがミックスした音源を一緒に送り、そのイメージを音で伝えるのです。
あとがき
エンジニアさんがベテランで、アレンジャーやクリエイターが若手だった場合、ミックスの指示をヘタにしてしまうと、ちょっと気まずい感じにもなりかねません。
この辺は、人間関係なので、微妙なところがあります。
ただ、知っておいたほうが良いのは、音量や音質関係は、本来アレンジャーやクリエイターが扱うものではない、ということです。
あえて望むなら、これを踏まえた上での要望にとどめておきましょう。