日々じゃーなる

日々の生活でおもったことをなんとなく、でも結構まじめに綴るブログです。 趣味は読書とビリヤード。仕事は音楽関係。

リアル楽器店の存在意義

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サウンドハウスなどのオンライン楽器ショップが世に浸透してからは、リアルの楽器店の経営も、家電量販店と同じように苦境に立たされている。
新品のエフェクターやギター、ベースの弦、電子鍵盤楽器や制作用ソフトウェアなどは、ネットで買っても店舗で買ってもほとんど差がないので、当然安い方で買うことになる。
したがって楽器店の価格競争となるが、人件費、土地代、在庫管理ということを考えると、オンラインショップに価格で勝負するのは難しい。
 
だとすれば、リアルな楽器店が生き残っていくためには、リアルな楽器店がオンラインショップよりも優っている点を打ち出していかなければならない。
 
という自分自身は、海外でも日本でも楽器店で働いていた経験がある。
たった一人の経験だし、それはインターネットがない時代のことなので、決して一般的な意見とは言えないが、一つの意見として述べてみよう。
 

楽器店は、「店」ではなく「人」に客がつく

 
音楽、とくに楽器演奏をしている者にとって、楽器店はワクワクする空間だ。
昔はインターネットがなかったので、楽器を買うのはもちろん、その知識を得るのも楽器店がほとんどだった。
今はオンラインショップがあるので、選択肢はある。知識だけなら、もしかしてネットで調べたほうが早いのかもしれない。
しかし、楽器に対するこだわりや要望を店員に説明し、それに見合った楽器を紹介してもらう、という流れは、ネット販売が代わりになれるかというと、難しいし、できたとしても寧ろ手間になる
こだわりや要望が、箇条書きにできるような内容でないことが多々あるからだ。
客「クリーム時代のクラプトンが弾いていたようなギターの音で、もう少し今風のやつってない?」
 
店員「あー、ギターとしてはこれが近いですが、あの音はこのギターのピックアップをこっちにのせかえて、さらにこれ系のエフェクトをかましてますね。さらにアンプはこれを使って、セッティングはこんな感じにしてます」

客と店員のこういったやりとりは、楽器店では日常茶飯事で、これらも確かにネットで調べられるのかもしれないが、聞いたほうがおそらく早いし正確だ。加えて、その会話をすることそのものが心地よいひとときだと言える。

 
高級な楽器を購入する場合は、より細かいこだわりをもって購入することが多いので、店員の存在が重要になってくる。
自分が働いていたネットがない時代ですら、楽器店は店ではなく人に客がつく、と言われたもので、ネットの時代である現代は、よりその傾向は強いと思われる。
信頼をおいている店員の説明をうけて高級楽器を手にしたい、という人は少なくない。
楽器店の店員は、その信頼を得るために日々努力していると言ってもよい。
 
楽器店の店員と客の関係は、美容室の美容院と客の関係に近いかもしれない。
あるいはアパレル店員と客の関係にも近いかもしれない。
ある程度親しくなってしまえば、いくたびにこちらの要望をいちいち伝えずとも、求めているものを紹介してくれる。
時には店に行かずとも、メールや電話で「◯◯さんが好きそうなギター入荷しましたよ!試奏しにきませんか?」といったコミュニケーションもある。
これもメルマガ等で代行可能かもしれないが、客・常連の間でかわされるアナログな方法には、いまだかなわないのではないだろうか。
 

見て、弾いてみないとわからない

 
上述したように、楽器店に売っているものの中には、ネットで買っても店頭で買っても差がないものも多いが、店頭で買ったほうが明らかに良い買い物ができるものもある。
例えばギター、ベース、ドラムなど。
機械と違い、これらは木材をふんだんにつかっており、ハンドメイドの楽器はもちろん、大量生産の楽器ですら、その音は一つ一つ違ったものになる。
また、塗装に関しても、同じ型番の楽器ですら微妙に変わる。
 
つまり、見て、弾いてみないとわからない。
例として、ギターを選ぶポイントは3つあり、その3つとは見た目、音、弾きやすさと言われるが、それらは実際に見て弾いてみないと判断がつかない場合が多い。
新品のエフェクターなどは、店頭で試奏して音を確かめ、安いネットで購入という方法もあるが、ギター、ベース、ドラムなどは、上述した理由により、これができない。
 

リアル楽器店は不滅、であってほしい

 
客、店員という関係を外したとしても、リアルな楽器店に軍配があがることはまだまだありそうだ。
オンラインショップは、インターネットという特質を最大限に活かした販売方法を実行している。
検索の容易さや価格の抑えやすさ、大量のレビュー掲載などがそれにあたるのかもしれない。
だとすれば、リアルな楽器店は、リアルな楽器店だからこそできることを模索すべきで、それは探せば探すほど、意外とあるのかもしれない。