ピアノを始めたのは4歳、、、らしい。
物心ついたときには、すでにピアノを弾いていたから、親から聞いた話だ。
ピアノはクラシックから
これも当時の話なので、現代のことはよくわからないが、ピアノは基本クラシックから習うものだ。
POPSという名の通り、世の中に最も多く出回っている音楽ジャンルはPOPSなのだが、そのPOPSを題材にピアノを習い始める人は、あまりいない。
つまり、弾く曲と巷に流れている曲が違う、ということになる。
なぜピアノはクラシックからなのか。
ピアノを始めたのは物心つく前の自分には、そんな疑問を持つのに約20年の月日を要した。
そして、その明確な答えは見つかっていない。
音楽における「正解」
クラシックの世界ではなく、POPSの世界に足を入れて現在までに至る自分にとって、音楽とは「正解がない」ものだとみなしている。
少なくともPOPSにおいては、かっこよければなんだって良い。
もちろん、音楽という枠内である必要はあるが、その枠の決め方も音楽ジャンルによって微妙なズレがある。
例えば、クラシックの中には、厳密にドとド#の間には音はないことになっている。
ピアノを含めた全ての楽器は、チューニングを正確にした状態で演奏することが音楽とみなす前提条件のようになっている。
しかしPOPSの場合、ドとド#の間の音も当然のようにつかう。
ギターのベンド(チョーキング)だ。
ロックも含むPOPSにおいて、エレキギターが入っている場合、ベンドが一切使われていない曲を探すほうが難しいくらいだ。
ピアノに話を戻す。
繰り返すが、音楽に正解はない。かっこよければなんだって良い。
正しさを教えるピアノレッスン
しかし、幼少期から習うピアノレッスンは、ひたすら「正しい」と言われている音楽を習う。
譜面に書いてあるとおりに弾くことが大切であり、自分でそこにアドリブを加えるという発想はない。
正しい音楽をひたすら叩き込まれたピアニストは、その価値観を多様化させる、つまり、かっこよければなんでも良い、という思考回路になることは、非常に難しい。
それは自分自身の経験でもあるし、自分よりもはるかにレベルの高い、一流の音大を卒業したピアニストが、POPSに向き合った場面に出くわすと、かなりの頻度で同じことを感じる。
弾き方ひとつとってもそうだ。
クラシックには、ピアノを弾く正しい姿勢があるが、POPSにはそんなものはない。
あえていえば、ライブ時に弾き姿がよければなんでも良い。
(逆に、その弾き姿がよくなかったら、いくら上手でもダメ)
また、豊富なグリッサンド、ゴーストノートといった、同じ鍵盤だがクラシックにはまず出てこない奏法も多くある。
そもそも、鍵盤といってもピアノだけでなくオルガン(足踏みオルガンではない)、エレピ、シンセサイザーなどがあり、各々で奏法は大きく違う。
ピアノの正しさ、音楽の正しさを習ったクラシック畑の人にとっては、POPSではその正しさは意味をなさない、という切り替えの為のエネルギーを使わなければいけない。
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昨日素晴らしいライブ(数千人動員のホール)を見る機会に恵まれ、その鍵盤奏者に楽屋で挨拶をしたときに、鍵盤歴を質問した。
なんと、習ったことがないという。
しかも鍵盤を始めたのは30代。
ひたすら音源を聞いてコピーを繰り返したそうだ。
それで今は、ホールクラスでライブをするアーティストのサポートができるレベルだ。
この方以外にも、同じような方は多くいる。
◆
ピアノを幼少期から習って何十年という人。
悲報だ。
譜面さえあれば、何でも弾けると思っている人も多いが、POPSの世界での演奏には、通用しないことが多くある。
(もちろん、手の筋肉に関してはかなりのアドバンテージがある)
そして、鍵盤にあこがれているけれども、鍵盤は幼少期から習わないと習得が難しいという風潮があるため、なかなか一歩が踏み出せない人。
朗報だ。
実は今からでも全く遅くない。
なんといっても、コピーするべき音源は巷に溢れかえっている。
さらに、それを自分がかっこよいと思うように変えてもOK。
つまり、完コピでなくても良い。
姿勢、指の形などはどうでも良い。出音が全て。
あえて言えば、上述したが、姿勢に関してはライブを想定しているのならば、できるだけかっこよく弾くこと。
クラシックは否定しない。
音楽は、ジャンルによって上下があるわけではない。
個人の主観で決めて良いものだ。
これはクラシックといえども同じではないだろうか。