音楽に限ったことではないが、不況が叫ばれて久しい。
こと、音楽において分岐点になったのは、ダウンロード販売だろう。
そして今ならばストリーミング(聴き放題)サービスが、ビジネスモデルの変化をさらに早めている。
これらのサービスが始まるまでは、CDしかなかったと言って良い。
そして、CDはダウンロード販売やストリーミングに比較して、とにかく「手間暇」がかかるのだ。
個人でもメーカーでも在庫は抱えないといけないし、そのためには場所も必要。
在庫だけでなく、販売のための場所もだ。
販売といえば、売るスタッフもいるし、運搬も必要。
これがデータ化されるとどうなるのか。
在庫はデータなので、基本的にはない。
販売スペースはネット上だが、地理的な販売場所がない代わりに、ネットワークさえあれば世界中での販売が簡単にできる。
販売のスタッフも、基本いらない。
その代わりに必要なのはサイト運営スタッフだが、全国、世界流通させるために必要な販売スタッフ数と比較すれば、サイト運営スタッフはほとんどゼロに近いと言える。
運搬は言うまでもなく、不要。
これだけ手間暇をカットできるのだから、値段も下げられる。
アルバム単位ではなく、曲単位で購入できるようなシステムの構築アイデアも出るわけだ。
(それで採算がとれていけるかどうかはわからないが)
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音源制作現場においても、コンピュータの普及により、効率化が進んだ。
ビジネスなので、人件費も含めたコストを考えると、制作期間は短ければ短いほど良い。
しかし、それをコストと捉えると削減すればするほど良いと感じるが、手間暇と捉えると、そこには何かしらの付加価値が生まれると感じる。
例えばマスタリングという作業。
この作業に含まれる一つが、曲間調整だ。
CDをプレーヤーにセットして、シャッフルやリピート機能を使わずに再生すると、曲と曲の間にブランク(音がなっていない箇所)がある。
これは、その曲の終わりを、実際に音が消えてから何秒後に設定するか、そして次の曲の音の始まりまで何秒のブランクをあけるか、という調整をしているために故意に作られたブランクで、マスタリングエンジニアにディレクターが指示を出して微調整を重ねていく。
それはミリ秒単位で、それを経たCDを聞いた時に、いわゆる「違和感のない曲間」に聞こえるのだ。
この作業は、データ再生には必要がない。
ここに手間暇をかける必要はない。
マスタリングの現場にいると、その調整は正にプロの作業で、感動すら覚える。
しかし、そこに感動し、そこに対価を払って良いという人が大勢いれば、CDは以前と変わらず好調な売れ行きになっているはずだ。
確かに違和感のない曲間だが、それよりも便利で安い方が良い、という考え方のどこにも悪意はないし、消費者選択の自由に過ぎない。
いくら業界内でその作業に感動し、付加価値だと叫んだところで、そこに対価を払う人がいないと、付加価値とは呼べない。
そして、それを悔しいながら認めなくてはいけない統計が今のCD不況だ。
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音楽の中でも、自分のいる世界はPOPS。
POPSの語源はpopular。人気があることが第一義だ。
人気があって音源が売れることと、POPミュージックの音楽的価値が比例しているということ。
逆に言えば、売れなかったらその分音楽的価値も低いとみなされる。
それがいやなら、POPSではない世界を選ぶべきだ。
POPSにおいて、CDにはNOを突きつけられているも同然の売上低迷。
製作者サイドの悔しさとは関係なく、それが現実だと認めるところから、新しい文化が始まるのかもしれない。
「本物の音楽」「本格的な音楽」
こういった言葉も時々耳にするが、少なくともPOPSにおいては、これらの音楽と「売れている音楽」の意味は限りなく近い。
それは、CDの美学ということよりもずっと優先されるものかもしれないし、そうあるべきだと感じる。
www.famo-seca.club
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