音楽が職業なので、これに関しても音楽に偏った意見になるかもしれません。
教則本ってありますね。
音楽に関しては各楽器の演奏方法から作曲、作詞、DAWソフトの使い方、音楽マーケティングの本まで販売されています。
どのくらいの数が売られているのかわかりませんが、私が音楽をはじめた頃には既に結構な数の教則本が売ってあったので、それなりの販売数があるということでしょうか。
実は私もこの世界に長くいるし、文章を書くのも嫌いではないということで、本を書かないか、と言われた経験があります。
内容は決めてもらっても良いが、音楽理論関係などはどうでしょう、というオファーでした。
教則本の類はそんなに読んでいないし、書くのも結構な時間と労力を使いそうなので丁重にお断りしました。
しかし想像してみたんです。
もし音楽理論書を書くとしたら、どんなことを書くかな、と。
どうせ書くなら、やはり実践的なものが良いと思います。
音楽理論を学ぶのに最も良いのは、既存の曲の分析です。
そもそも音楽理論は、数学など確立されたものとはすこし違います。
ことPOPSにおいては、人が感動すればなんだってOK、というのが最も大切なルールなので、体系化することが非常に難しい。
時代によっても変わるし、聞く人によっても変わります。
だから、理論書に堂々と書く内容は、どうしても最大公約数的なものになります。
で、それだけではどうしても項数が稼げない。
だから、最大公約数的なものプラスアルファを書くことになる。
上記したように、最も良いのは既存の曲の分析です。
選曲も大切で、自分が最も感動した曲が良い。
こうすると、なぜ自分が感動したかを音楽理論的見地から分析できるからです。
しかし、この選曲は当然人によってばらけるので、結局本では選べません。
つまり、書けるのは「好きな曲の分析をしよう」だけです。
教則本の場合、そこに割いてある項数が多ければ多いほど重要性が高いと思われがちですが、すくなくとも音楽の教則本に関しては、これはあてはまりません。
特に理論に関しては、POPSで難しすぎる理論的な技を使うよりも、初歩的な技を、どこで、どのように使うかの方がはるかに重要で、逆を言えば難解な理論はPOPSにおいてはあまり使わないこともあります。
しかし、項数を稼げるのは後者です。まるで難しい理論の方が重要性が高いように感じられるわけです。
好きな曲を分析しよう、この一文にこめられた思いは相当に重い。
それを伝えるのが教則本では難しい。
これは理論書だけではありません。
例えば、ギターの教則本には、難しいスケールのことなどもたくさん書いてありますが、どこかには「リズムが大切」とも書いてあります。
正直、凝っていない、普通のバッキングのギター演奏が最も重要です。
これもおそらく結構な教則本に載っていますが、項数は全く稼げません。
反面、スケールは項数を稼ぎやすい。
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教則本を使うことは否定しません。
ただ、読む方にも意識が必要で、そこに書いてあることのなかで最も重要な事は何か、ということを考えながら読まないと、実践では役に立ちません。