夏生まれだからなのかどうかはわかりませんが、私は暑さに強く寒さに弱い。
寒さの方は、弱いだけでなく嫌いです。
つまり冬が最も嫌いです。冬の期間で楽しめるのは、年末年始の厳かな感じくらいで、それ以外の期間は早く過ぎ去ってほしいと、毎年心の底から思っています。
一方、だからなのか温泉は好きです。特に露天風呂なんか最高ですね。
暑い時に露店風呂に入るのも悪くはありませんが、やはり寒いときの方が、そのギャップのおかげで気持ち良い。
ちなみに、露天風呂が好きだから冬が好きという人もいますが、それはロジックとして反対ですよね。
日本の気候は決して過ごしやすいものだとは思いませんが、それでもとりあえず一年を通じて、常識的な気温内には収まっています。
しかし、露天風呂があるような温泉宿の中には、かなり山奥に位置するところもありますよね。
都会の喧騒から離れ、非日常を味わおうと思えば、ちょっとくらい山奥のほうが趣があってよいというのはわかる気がします。
しかし、山中の気温は平地とは違います。天気予報で確認できる気温予想は、大抵平地のもので、山中の気温はもっともっと低い。
つまり、寒いのが苦手かつ嫌いなわたしにとっては、過酷だということになります。
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数年前の年末、温泉地として有名なところに妻と2人で旅行に行きました。
その年は、その地域の人に聞いてみても見たことがないというくらいの積雪と、その積雪量に比例するような寒さだったのです。
上記したように、それは露天風呂に入る気持ちよさが増すということになります。
美味しい夕食を食べ、お酒ものみ、少し酔いがさめた頃に、さあ露店風呂に行こうということになりました。
窓の外を見ると吹雪いています。猛吹雪というほどではありませんが、ヒューヒューと音がするくらいには吹雪いています。
旅の醍醐味は非日常です。こういう吹雪の時に露店風呂に入る、というのも良い思い出(というかネタ)になる、と思い、いざ露天風呂へ。
行ってわかったのですが、その露天風呂は、風呂だけでなく脱衣所も外なんです。
風呂に入ってしまえば寒くありませんが、服を脱いで風呂に入るまでの間は、極寒の中に裸、ということになります。
それは10秒くらいでしょう。長くても20秒。
この時間は通常ならば、たったの◯秒ですが、極寒の中だと恐ろしく長く感じます。
正直、人は寒さで死ぬんだということをありありと実感しました。
極端と思うかもしれませんが、本当にそう思ったのです。
極寒から湯船に浸かったときの気持ちよさはいうまでもありません。
しかし、寒さが苦手な私は、あんなに寒くなくたっていいじゃないか、と誰に向けてよいか分からない怒りを覚えました。
平地で生温く生活している私にとっては、まちがいなく人生で最も寒かった瞬間でした。
私はサバイバルにはとことん弱そうです。