この件は、社会的にも、そして自分の中でもまだしばらくはおさまらないと思います。
吉本の芸人さんが、テレビで「契約書、書いていない」と言っているのはよく耳にします。
あれだけたくさんの芸人さんが言っているのだからそのとおりと思っていましたが、今回の事件を機に、吉本側がそれを正式に認めました。
そして、それが民法上も問題ない、ということも初めて知りました。
これに関して、社会派ブロガーのちきりんさんがいつもながらの鋭い指摘をされています。
吉本興業の契約が「口頭で締結されている。ただし書面にはされていない」というのを理解して、「じゃあなぜ他の芸能事務所は契約を書面にするのか?」と考えてみた。(続)
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) July 19, 2019
他の芸能事務所では「タレントや俳優を縛るために書面にする。書面にしておかないと、売れた時に独立されたり移籍されてしまう。それを防ぐためには、契約をしっかり書面化しておく必要がある」しかし(続)
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) July 19, 2019
吉本興業の場合、めちゃくちゃ売れた芸人も、ほとんど独立も移籍もしない。(なぜならこの分野では独占的な立場にある事務所だから?) だから、契約を紙にする必要を感じていない。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) July 19, 2019
なるほど、と思います。
確かに、吉本には現状、契約書を紙にする必要性もなさそうですね。
しかし、芸能事務所に限らず、ほとんどの会社は雇用契約書を紙にしています。
同業他社に転職したり独立したり、という可能性がほとんどない、またはそれを特に咎めない会社でも、雇用契約書を紙にしています。
「必要性がない=紙にしない」ではなく「必要性がなさそうでも紙にする」が一般的です。
なぜでしょうか。
それは一重にトラブル回避でしょう。
事故ったことがない人でも車には保険をかけるのと同じで、必要性は「現在」や「過去」からではなく、「未来」を考えて出てくるものです。
吉本の芸人さんが不祥事を起こしたことはこれが最初ではないでしょう。
「過去」では、契約書がなくてもそれが問題になったことはなかった(もしくは問題が明るみにならなかった?)のかもしれません。
しかし、それをもって「未来」でも、契約書を紙にしていないことによるトラブルなんて起きないよ、というのは、傲慢に感じます。
そもそも、契約書を紙にしないメリット(=紙にするデメリット)はなにかあるのでしょうか?
手間がかからない?それだけですか?
コストを抑えるのは当たり前の企業努力ですが、こういうコストの削り方は、後に(未来に)さらに大きなコストになって跳ね返ってくる「かもしれない」から、削らずにどこの企業でもそんなコスト削減はしないわけです。
こういうことを書くと、「自分の意志で吉本に入ったんだから、嫌ならやめれば良い」という意見が出てきます。
確かにそのとおりです。
ただし、それを言ってよいのは周りの人間であって、吉本という企業がそれを言ったらパワハラです。
日本でトップを争うほど大きな事務所である吉本という企業は、その大きさゆえに社会に果たす責任も大きい。
経営的に成功しているから文句言われる筋合いはない、というのであれば単なる拝金主義企業です。
日本で確固たる地位を築いている芸能事務所がこんなんで良いのでしょうか?