演奏スキルの根幹は、「正しい音」を「適切な音量」で「正しいタイミング」で弾くことに尽きます。
この3つさえ守れば完璧です。
この3つが完璧ならば、絶対にプロ級の演奏ができます。
正しい音、というのは一番わかりやすい。
間違った音を出さなければ良い。ちゃんと音がでたら、この要素はゴールです。
適切な音量、というものには、ちゃんとした正解がありません。
盛り上がったところでは大きく、落ち着いた箇所では小さく、が基本でしょうけど、実際には細かく変化します。
ただ、正解がないゆえに、ある程度演奏者に任せられているところがあります。
そして正しいタイミング、これはつまりリズムですが、リズムに関しては「私はリズムをマスターした」という人には会ったことがありません。
まあ、そう言っちゃう人はいますが、実際にはかなり難しい。
これは、想像したらわかると思います。
ジャストのタイミングで音をならすというのは、0.1秒でもずれてはいけないということです。
0.1秒ずれた演奏というのを波形処理で作ってならすと、気をつけて聞かなくても余裕でそのズレを感じることができます。
1曲が5分あったとして、その5分間演奏するうちに、たった一度でもずれてはいけない。
これが難しくないわけがありません。
これだけ難しいからこそ、その訓練方法はいろいろ用意されています。
代表的なものはメトロノーム。
普段は常にメトロノームを使って練習することが好ましいでしょう。
しかし、本番の演奏でメトロノームを聞くわけにもいきません。
で、本番では身体でリズムを取る、という人が結構います。
身体全体を揺らす人もいれば、足でリズムを取る人もいます。
この「足でリズムを取る」ということに関しては、昔から賛否両論あります。
身体を揺らすためには足を使わないといけないので、つまりリズムは足で、という人。
それから、足はそもそもそんなに器用に動かないから、足をリズムの軸にするのはおかしい、という人。
どっちももっともらしいのですが、正直言ってこれに正解はありません。
コンサートやライブでは、プレイヤーが足を使ってリズムをとっているのをよく見ます。
これにより、やっぱり足でリズムだ!というのはちょっと早とちりです。
ライブやコンサートは見た目も大事なので、じーっとして演奏するより多少身体を動かしたほうが見栄えが良い、という理由で足を動かしていることも多々あります。
また、レコーディング風景を見ることは一般の人はあんまりないと思いますが、レコーディング時に足を一切動かさないプレイヤーも多くいます。
これをもって、やっぱり足でリズムをとる必要なし、と決めるのもこれまた安直です。
マイク録りによるレコーディングの場合は、足を動かしただけでも雑音が入ってしまうし、ヘッドホンから正確なクリックが流れているから、わざわざ足を動かす必要がない、とも考えられます。
普遍的な正解はありません。
身体はみんな違うので、足でリズムをとった方がうまくいくのか、いかないのか、というのを自分自身で検証することが必要です。
DAWソフトを使って録音、波形を見れば、どのくらいリズムキープできているかを視覚的に判断できると良いと思います。
検証の結果、足でリズムをとった方がとらないよりリズムがよくなったのならば、どれだけ熟練者や上級者が「足でリズムをとるのがNG」と言っても無視です。
繰り返しますが、人の身体はみんな違います。
逆に足でリズムをとってもリズムが良くならなかったら、疲れるだけなので別の方法を模索する必要がありそうです。
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演奏スキル上達とその練習に関しては、良い練習方法がスキルを上げるのではなく、スキルが上がった練習方法を良い練習方法と呼ぶ、ということを知っておいたほうが良いでしょう。
練習はあくまで過程、本番で良い演奏ができれば、どうだって良いのです。