街のリハスタと違って、プロ用の(レコーディング)スタジオは、一見お断りのところが結構あります。
これには、有名人が出入りすることによる混乱を防ぐというわかりやすい意味もありますが、別にも理由があります。
お高くとまっているわけではありません(笑)。
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音楽制作の要であるレコーディング及びミックス。
これらは、以前説明した制作過程の終盤になります。
(作詞作曲→編曲→レコーディング→ミックス→マスタリング)
各過程にはその道のプロがいて、一つの作品はこれらプロたちのバトンリレーによって最後には世に放たれます。
ところが、こういった全体のありかたや過程を知らない一見さんもいるのです。
というより、知らない人のほうが多い。
知らない人がこの全体像を知らずにスタジオに来るとどうなるか。
ミックスを始めちゃったのに、2番のBメロをやっぱり変えよう、なんてことを言い出すことがあるのです。
これは、よほどのことがない限り受け入れられません。
これは建物を建てることにたとえたらわかりやすいかもしれません。
マンションが建ってしまって、外壁の塗装を開始したあとに、やっぱり階数をひとつ減らそう、と言われたら、それは対応できない、ということと同じです。
建物だったら無理と想像つくのに音楽で想像つかないのはなぜでしょうか。
それは、音楽制作過程が全然知られていないからです。
スタジオだって商売なので、本当は一見お断りなんかせずに、スケジュールが空いていたら受け入れたい。
しかし、全体像を知らずに受け入れると、ここで揉めることになります。
結局、そこで揉めて不毛なやりとりをするくらいなら、一見はお断りしておこう、となるわけです。
揉めているときに、これまたやっかいなのが、お金で解決しようとするタイプです。
お金はいくらでも出すから、そこは妥協したくない、と言い張ります。
しかし、これよく考えたら音楽をバカにしています。
良い音楽は、お金さえかければ作れると思い込んでしまっているんですよ。
確かに、楽曲制作にはすごくお金がかかります。
でも、それはお金さえかければ良い楽曲になる、という意味ではありません。
特に0から1を創り出す作曲の部分に関しては、身を削ってメロディーやコードを紡ぎ出しているのです。
作曲家は時に、自分の曲は自分の子供と同じだ、と言います。
お金を出すから曲を作り変えろ、という行為がどれだけ作曲家にダメージを与えるか想像してみてください。
そういう問題ではないのです。
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楽曲制作における全体の流れ。
各過程にいるプロはそれをどこまで意識しているのか。
実は意識する必要がありません。
なぜなら、全体を統括する役割の人がいるからです。
それがディレクターの仕事です。
次回は、表には出てこないディレクターの仕事をざっくりと説明してみようと思います。