日々じゃーなる

日々の生活でおもったことをなんとなく、でも結構まじめに綴るブログです。 趣味は読書とビリヤード。仕事は音楽関係。

プロ用のスタジオは、なぜ一見お断りなのか 2/2

前回の続きです。

(前回の記事はこちら

 

作詞は作詞家。

作曲は作曲家。

編曲は編曲家。

演奏はプレイヤー。

歌はボーカリスト。

録音とミックス、マスタリングはエンジニア。

 

音楽制作過程ごとに役割を書くとこうなります。

じゃあディレクターの仕事はどこにあるの?

いなくてもどうにかなるんじゃないの?

と思う人もいるかも知れません。

 

実際にアマチュアバンドでディレクター不在は当たり前ですし、それで音源をリリースすることだってあります。

 

しかし、プロの現場でディレクターは必要不可欠な存在です。

 

まず第一に、、、

プロの現場ということはつまり、そこにお金がかかっています。

与えられた制作費をどこにどのように配分して、という権限をもっているのはディレクターです。

 

音楽制作では作曲からリリースまでの間にいくらでもお金をかけたいところがあります。

各所の担当者は、音楽へのこだわりのために必要なお金をできるだけかけたいと思うでしょう。

 

でももちろん予算には限りがあるので、言われたら何でもお金を出すというわけにもいきません。

そこを調整するのも大切な仕事です。

 

ただ、私が思うディレクターの最も重要な点は、最終権限を持っているということです。

 

繰り返しますが、作曲からリリースまですべてプロが担当しています。

各々に強いこだわりがあります。

そして、音楽には明確な正解がありません。

 

各所プロたちの意見を全部聞き入れるなんて土台無理です。

だから、最終ジャッジをディレクターが下す、というルールが必要なのです。

 

例えば、とあるバンドの歌のレコーディング。

曲を作ったのはギタリスト、歌詞を作ったのがボーカリスト。

これでボーカルレコーディングをすると、その歌い方に関して作曲者であるギタリストとボーカリストの意見が割れる、なんてことはしょっちゅうあります。

 

音楽には正解がないので、この議論は終わりがありません。

でも、制作はすすめないいけません。

そこで、最終ジャッジをディレクターが下すのです。

 

ただ、ボーカリストが全然納得していない状態で歌を歌っても、その歌は決して良くならないので、なんとか前向きに妥協しもらうよう工夫する、というのもディレクターの大切な仕事です。

 

ドラマなんかでは、ボーカル録音現場に厳しい声が飛び交ったあとに、「私がやりたい音楽はこんなんじゃない!」と言いながら現場を飛び出していく、みたいなシーンもありますが、正直あんなことはありえません。

 

ディレクターは、その制作を終わらせ、リリースし、売上をあげるところまでが仕事です。

理由はさておき、結果的にボーカリストが現場を飛び出して行ったら、その責任は誰にあるか。

もちろんディレクターです。

権限と責任はセットです。

 

良い作品を作るため、でも各所を担当するプロのプライドもちゃんと保ち、予算も考え、期限も守る。

正解がない音楽において、これは至難の技です。

 

 

素晴らしいアーティストが世に出てきたら、アーティスト本人たちがもっとも称賛をあびます。

アーティストはそういう役割なので、それで良いのです。

 

ただ、その背景には凄まじいプロたちのバトンリレーがあり、それを統括する敏腕のディレクターがいる、ということを少しだけ知っておいてもらえると嬉しいですね。