作曲をする場合、全くゼロから作るのは難しいので、何かしらの曲を参考にすることが多いです。
楽曲コンペでも、参考曲が書いてあるコンペシートがほとんどです。
さて、楽曲制作をしている人が、参考曲を用意したうえで陥る罠があります。
それは、アレンジの罠です。
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音楽を聴く人のほとんどは、楽器の知識や、音楽理論を知らない人です。
知識がない人達は、楽曲の「何を」気に入っていると思いますか?
答えは、メロとコードです。
(歌詞は今回は除外しています)
良い曲を書きたいと思うなら、最もこだわらないといけないのもメロ、コードです。
ところが、自身が曲を作る方になったら、メロやコードよりもアレンジの方に時間と労力を注ぎ込む人が多いのです。
なぜそうなってしまうのか。
楽(ラク)だから
です。
参考曲の間奏に出てくるリードシンセの音がかっこいい。
そう思ったら、同じソフトシンセを使えば良い。
ピアノのバッキングパターンが好きな曲があったら、同じように打ち込めば良い。
つまり、アレンジというのはある程度の「正解」が見えるのです。
そして、DAWソフトを使えば、それはいとも簡単に再現できます。
一方、メロとコードはどうでしょうか。
理論的な正解はあります。
ところが、
良いメロと良いコードに正解はありません。
ある程度の正解、すらありません。
コード進行はまだしも、メロを参考曲のまま使うのは違法なので、アレンジと同じようにはいかないのです。
正解のないメロやコードで悩むよりも、ある程度の正解があるアレンジを、DAWソフトを駆使して施す方が楽、ということです。
ところが、上にも書いたように、聴く方はメロとコードを感じています。
メロやコードに魂が込められていない曲を好きになる人は少ない。
大衆は馬鹿にできないのです。
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音楽は、自身がアウトプット側になったら、純粋なリスナーには戻れません。
楽器演奏ができるようになった人は、自身の担当楽器にフォーカスするようになってしまいます。
同様に、DAW操作に慣れた人は、DAWのテクニックにフォーカスしがちです。
結果、優れた楽器演奏やアレンジが人気の要素だと思ってしまうのです。
ここに大衆とのズレが生じます。
優れた楽器演奏やアレンジで良い曲ができるわけではありません。
良い曲の要素の一つに、優れた楽器演奏やアレンジがあるのです。
そして、良い曲とはメロとコードで決まります。
メロとコードは、要素ではなく、曲そのものです。
だから、アレンジよりもメロやコードの方が重要度が高いのです。
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良い曲がなかなかできない、と思っている人は、「良い曲」とはなにか、をもう一度考えてみてください。
私が思う最良の方法は、1番のメロとコードができるまでは、アレンジをほとんどしない、というものです。
シンプルなガイドメロとピアノのコードのみ。
DAWソフトを使わないのも一つの手です。
ギターでコードをならしながらメロを「ラララ」で考えていきます。
アレンジをほとんど施していない段階で、良い曲になりそう、という予感がしないメロとコードは、いくらアレンジを施しても良い曲にはなりません。