世の中には歌が入っていない音楽がたくさんあるのに、オリコンでもダウンロードでも、日本でも海外でも、上位を占めるのはほとんど歌のある音楽です。
それほど、歌というのは人の心を惹きつけるのでしょうね。
実際に、音源制作現場ではやはり、歌周りに時間も労力も多くをかけます。
ところで、歌の良さを決める要素ってなんでしょうかね?
すぐに考えつくのは、数値化できるものです。
ピッチ(音程)、リズム、声量、声域ですね。
これらは正解のある良さです。
ピッチはバッチリ、リズム感もあって、声もでかくて高域まで出る。
でも、あんまり歌が良いとは思えない人っているでしょう?
別にプロ的な耳を持ってなくてもわかるレベルです。
それは、数値化出来ないところまで聞き取る能力が人には備わっているからです。
それは、「歌心」です。
なんじゃそりゃ、とおもうかもしれませんが、これ以上の表現を思いつきません。
そして、これは全然数値化出来ないし、上に挙げた数値化できる要素よりも歌の良さにおいては優先されます。
そんなに歌がうまくないけど、なんか良い、っていう人っているでしょう?
それは歌心が他を凌駕しているからです。
それから、声質。
「あーーー・・・」って声を出すだけで、良い声だなぁ、っていう人いますよね。
歌心や声質は、正直トレーニングでよくなるものではありません。
残念ながらそのほとんどは、生まれつきか、生まれてから数年間の環境で決定づけられます。
私は、数あるボーカルトレーナーを敵に回してきてしまったんですが、それはボーカルトレーナーが教えられのるが数値化できることしかないからです。
しかも、その数値化できることすら、そう簡単にはよくなりません。
ピッチだってリズムだって声量だって声域だって、DAWソフトを使えば簡単に数値化、可視化できます。
本当に効果があるのならば、そのビフォーアフターを数字で示してほしいのですが、そんな例はどのくらいあるのでしょうか?
しかも、それが歌の良さを決定づける要素の最優先ではない、となると、果たしてボーカルトレーニングを受ける意味は?となるわけです。
ボーカルトレーナーに習って、以前より歌が良くなった(上手くじゃないですよ)人っていますか?
先入観抜きでビフォーアフターを見て、本当に客観的評価が上がった人なんて、聞いたことがりません(本人や講師は決まって「良くなった」って言いますけどね)。
ちなみに、プロの歌い手ともなると、全国ツアーで何日間も歌い続けなくてはいけないので、喉を傷めない方法をレクチャーする現実的なボーカルトレーニングは、効果があります。
しかし、それは歌が良くなりたいと思ってボーカルスクールに行く人が望んでいるものとはちょっと違うと思います。
声質は本当にアンコントローラブル。
歌心はギリギリ変えらるかも。
でもそれは、一回で数千円払ってトレーニングを受けたら身につくほどあまいものではありません。
世界中を一人旅する
壮大な恋愛を経験する
尊敬する人に出会う
これらの経験の方が、ボーカルトレーニングよりも歌心はつきます。
経験をひとつひとつ丁寧に自分の中に貯め込んでいく。
それがにじみ出た歌には、歌心が宿っています。